https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/8d467898ca2c73f16d16023b967b507df60ce9dd
 2月9日、ドイツのエネルギー大手企業子会社が、北アフリカのアルジェリアの国営企業から、ガスを購入する中期契約を結んだ。
液化天然ガスの海上輸送ではない。パイプラインで受け取るのだ。
アフリカ大陸とドイツがパイプラインでつながるのは、歴史上初めてである。

戦争が始まる前、ドイツはガス輸入の55%をロシアに頼っていた。今、ロシアからのパイプライン輸入はすべて止まっている。
代わりにアフリカに接続されたのだ。東から南への大転換だ。
エネルギー問題はただの経済事項ではないのは言うまでもない。
ドイツが第一次世界大戦で敗戦し、アフリカ大陸の植民地を失ってから1世紀強。地政学の大変化の第一歩だと言っても、過言ではないのではないか。

■ガスの逆流
契約を結んだのは、ドイツの大手EnBWの天然ガス輸入販売子会社フェアブントネッツ・ガス(VNG)と、アルジェリアの国営石油・ガス会社ソナトラックである。
ガスはもう、アフリカからドイツへ流れている。
ドイツとアルジェリアは遠い。パイプラインは経由国を経てゆく。
アフリカ大陸のアルジェリアを出発したガスは、チュニジアを通り、地中海の海底を通り、欧州大陸に到達する。到達国はイタリアのシチリアである。
イタリアに到着した後は、オーストリアを経て南ドイツのバイエルン州へ向かう。

これらは既に存在しているパイプラインを繋いでいくものだが、主要なパイプラインのガスが逆流することになる。
そもそもイタリアとオーストリアは、TAG(Trans Austria Gasleitung)というパイプラインで繋がっていた。これがロシアのガスをイタリアへ運んでいた。
イタリアは戦争前、ロシアからガスを全体の40%、300億立方メートル輸入していた。
このTAGパイプラインの中のガスが逆流するのである。

イタリアにとっても、ロシアの代替ガスを探すのは、大きな課題だった。
イタリアがアルジェリアからガスを輸入するのは、戦争前からのことで、210億m3輸入していた。
ロシアの代替を探すのに、大変な親イタリア国であるアルジェリアは、フル稼働(300億m3)して輸送することを約束した。
アルジェリアは今後、さらにドイツからの分も請け負うことになる。
ただ、この輸送はまだ規模が大きくない。

今後は、アルジェリアからドイツまで、新しいパイプラインをつくるのだ。
イタリアとオーストリア・ドイツの間には、アルプス山脈がそびえ立っている。歴史的に国境をつくってきた名高い山脈である。
できるだけ迂回するものの、越えないわけにはいかない。巨大構想である。

昨年2023年の11月22日、ドイツのショルツ首相とイタリアのメローニ首相はベルリンで、エネルギーに関する包括的な協定に合意した。
ショルツ首相は、「イタリアとドイツ間の新しい天然ガスと水素のパイプラインの作業を進めることに合意できたことを嬉しく思います」と述べた。
そして、国境を接していない両国を結ぶ輸送インフラの拡大について
「ガスと水素の南回廊のさらなる開発が特に重要です。我々は、アルプスを横断する新しいパイプラインを建設することで、両国の供給の安全性を高める計画です」と述べた。

ソナトラックのラシド・ハチチCEOは、「VNGとの画期的な契約を通じて、欧州とのエネルギー・パートナーシップを強化できることを喜ばしく思う」と述べ、
今後の拡大に意欲を示した。

■ドイツは、どうやってロシアのガスを減らしたのか
戦争が始まって7ヶ月後の2022年9月、爆破事件を受けて、ロシアは大動脈 「ノルドストリーム1」を使ったドイツへのガス輸出を、無期限に停止すると発表した。
現在、ロシアからのパイプラインのガス輸送はゼロである。
ドイツは侵攻以来、ロシアのガス供給シェアを約55%から、2022年5月には約35%まで減らすことに成功していた。
しかし、依然として残りのシェアをどこから持ってくるかは、重大な問題だった。

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