国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」をめぐり、大村秀章・愛知県知事が会長を務める実行委員会が、名古屋市に未払いの負担金の支払いを求めた訴訟の上告審で、最高裁第三小法廷(林道晴裁判長)は市側の上告を退けた。6日付の決定。支払い拒否は違法として、市に未払い分全額の約3380万円の支払いを命じた一、二審判決が確定した。

 芸術祭は愛知県や名古屋市などでつくる実行委の主催で、市は約1億7100万円の負担金の交付を決め、開催前に約1億3700万円を払った。しかし、昭和天皇の写真を含む肖像群が燃える映像作品などを扱った企画展「表現の不自由展・その後」について、河村たかし市長が開催後に「日本人の心を踏みにじる」などと問題視。市は交付金の減額を決め、残額の支払いを拒んだ。

 訴訟で市側は、こうした作品を「公金で援助するのは許されない」などと主張したが、一審・名古屋地裁は「芸術は鑑賞者に不快感や嫌悪感を生じさせる場合があるのもやむを得ない」と述べ、作品の違法性を否定。市は負担金の支払いを拒めないと判断した。二審・名古屋高裁も支持した。

 第三小法廷は今回の決定で、上告ができる理由にあたる憲法違反などがないとだけ判断した。(遠藤隆史)

朝日新聞 2024年3月7日 16時05分
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