同性カップルの結婚を認めない民法などの規定は憲法に違反すると訴えた集団訴訟で、札幌高裁は14日、「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立する」と定めた憲法24条1項は「同性婚も保障すると理解できる」との初判断を示し、民法や戸籍法の関連規定を違憲とした。同種訴訟の高裁レベルで違憲判断は初めて。この日は東京地裁の2次訴訟判決もあり、憲法24条2項に照らし「違憲状態」とした。計7つの地裁・高裁の判決で「違憲」3件、「違憲状態」3件、「合憲」1件となり、同性カップルの権利を保障する法整備を国会に求める司法の姿勢が鮮明になった。(梅野光春、加藤益丈)
◆憲法24条1項は「同性婚も保障する趣旨」
 札幌高裁の斎藤清文裁判長は判決理由で、憲法24条1項について、旧憲法下の家制度での婚姻を否定し、当事者の自由意思で婚姻するために「両性」と表現したと指摘。制定当時は同性婚を想定していなくても、現在では性的指向や同性婚の自由も十分に尊重すべきだとした。
 その上で24条1項を「人と人との婚姻の自由を定めたもので、同性婚も異性婚と同程度に保障する趣旨」と解釈。さらに同性婚を認めた場合に「社会に大きな変化をもたらす」といった反対論については「的確な根拠があるとはうかがえない」と一蹴した。
◆国会の鈍い動き「合理性を欠く」
 また、婚姻できない同性カップルには相続などで著しい不利益があり、海外では同性婚の制度化が相次いでいることにも言及。国内で立法の動きがないことは「憲法24条の規定に照らして合理性を欠き、少なくとも現時点では、国会の裁量の範囲を超えている」とし、違憲と判断した。
 これに加えて斎藤裁判長は、現状を法の下の平等を定めた14条1項にも違反しているとした。異性愛者と同性愛者の違いについて、人の意思で選択・変更できない性的指向の差異だと認定。それなのに同性愛者は、婚姻による法的効果を受けられないため、現行規定について「差別的取り扱いに当たる」と結論づけた。

 この訴訟では、北海道の同性カップル3組が国に計600万円の損害賠償を求めて2019年2月に提訴。一審札幌地裁は21年3月、14条1項に違反するとして違憲判決を出していた。損害賠償については一審、二審ともに認めなかった。
 原告は高裁判決の一部を不服として上告する方針。
◆東京地裁は憲法24条2項に違反と判断
 一方で東京地裁は、法律婚と同様の法的利益を受ける法制度がないことは「同性カップルらから人格的利益を剝奪するもの」と認めた。法律は個人の尊厳と両性の本質的平等に基づき制定することを求めた憲法24条2項に違反する状態と判断した。
 飛沢知行裁判長は判決理由で、異性婚しか認めない現行制度では、同性カップルは▽税や社会保障の優遇措置など法律上の利益▽2人の関係を社会的に公証され、医療機関でパートナーの診察状況を当然に知る利益—など「重要な人格的利益を一切受けられない状況にある」と認定した。

 国民の意識は変わり、法律婚は男女間に限られるという「伝統的価値観は揺らいでいる」と指摘。同性カップルらのための制度がないのは「性自認と性的指向に即した生活を送るという重要な人格的利益を同性カップルらから剝奪するもの」で違憲状態と判断した。
◆「現時点で違憲とまでは言えない」
 しかし、具体的な制度の構築は「国会の立法裁量に委ねられている」とし、現段階で違憲とは言えないと結論付けた。「今後、国会で適切な法制度化がされるよう強く期待される」と国会に対応を求めた。
 原告は東京都在住の同性カップルら8人。国に計800万円の損害賠償を求めて2021年3月に提訴していた。
◆札幌高裁の画期的な判断に沸く
 同性婚訴訟で、札幌高裁が憲法は「同性婚も保障する」と画期的な判断を示したことに、東京2次訴訟の原告と弁護団も喜びを共有した。
 14日午前10時半の東京地裁での判決後、東京の原告らは東京都内で報告集会を開き、札幌高裁の判断を待った。午後3時過ぎに違憲判決の一報を受けると一斉に拍手した。会場のスクリーンには札幌高裁前で喜ぶ原告らの姿が映し出され、集まった人々からも「やった」、「素晴らしい」と歓声が上がっていた。
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◆東京地裁の判断「旧態依然な国寄り」(略)
 違憲と違憲状態 これまで計7地高裁で出た同性婚訴訟の判決では、国会の立法裁量を考慮しても、現行規定が憲法にそぐわない場合などを「違憲」と判断。一方、憲法に違反しているものの、国会による検討や対応が期待できる場合などを「違憲状態」としている。((略)

東京新聞 2024年3月14日 21時51分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/315221