宅配の元祖とされる牛乳販売店の苦境が際立ってきた。東京商工リサーチによると、2023年の牛乳販売店の廃業・解散は27件となり、過去最多だった17年の25社を上回った。新型コロナウイルス感染症の拡大を背景に人との接触を避けられる牛乳宅配の需要は一時拡大したが、コロナ禍の収束や量販店などの宅配事業の参入もあり、牛乳販売店の売り上げは減少。近年の原材料やエネルギー価格の高騰も追い打ちとなり、廃業が加速したとみられる。

特に目立つのは、「30年以上地域に根差し、牛乳販売を専業にしてきた小規模店の廃業だ」(東京商工リサーチ)。昔は牛乳はカルシウムやたんぱく質など栄養価の高い食品として需要があったが、今は高い栄養価を持ちながらも免疫力や睡眠の質を高める効果のある「機能性乳酸飲料」のニーズも高まっており、牛乳を専業とする販売店の競争力が弱まった。

加えて少子高齢化による人手不足や後継者不足も重なり、「経営環境の改善が見通せないことから、経営体力を残しながらも見切りをつけ、廃業に踏み切る経営者が増えた」(同)。実際、負債返済ができずに経営が続けられなくなった牛乳販売店の「倒産」の件数は、23年はわずか1件にとどまっている。

一方で、宅配専用の機能性乳酸飲料を売り出すことで牛乳販売店を増やす動きもある。牛乳宅配最大手の明治は、スーパーやコンビニエンスストアで販売していない宅配専用商品の開発などを通じて牛乳販売店の新設法人を増やし、全国で約3000店の特約店を展開している。東京商工リサーチは「牛乳専業の販売店は淘汰され、多様な食品を扱う販売店が生き残るという二極化がますます進む」とみている。

産経新聞 2024/3/18 16:37
https://www.sankei.com/article/20240318-D2WHT2OJ6VHQFLEBI3EL6ENFXQ/