ウクライナを訪問したビクトリア・ヌーランド国務次官(1月31日、写真:ロイター/アフロ)
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 ビクトリア・ヌーランド米国務次官が今年3月退任すると発表された。

 ヌーランド氏の退任は、彼女に代表される「ネオコン(新保守主義)」グループと、その背後にいるグローバリスト勢力の凋落を物語っている。

■ヌーランドと戦争研究所の好戦主義

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■米外交を危機に陥れたヌーランドの思想背景

 ヌーランド氏は、帝政ロシアの迫害から逃れウクライナから米国に移住した、ユダヤ系移民の末裔であり、反ロ感情が極めて強い。

 彼女は米国務省内では次官として長官、副長官に次ぐ第3位の序列にいたが、実質的には米国の対外政策の真の推進者であった。

 ヌーランド氏は外交官として高位にいたわけではないが、常に行動の先頭に立ってきた。

 米国の好戦的ネオコンのリベラルな軍事介入行動にとり、彼女はかけがえのない存在であったが、その介入行動によりほぼ20年にわたりイラク、シリア、リビア、ウクライナ、パレスチナの人々に災厄がもたらされた。

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 彼女の夫のロバート・ケーガン氏もユダヤ系の政治史家であり「トロツキズム」の研究者として知られている。また彼は、民主主義などを掲げて他国への介入を主張する、ネオコンの理論的旗手でもある。

 トロツキズムは、ロシア10月革命の指導者の一人であり、ソ連共産党政治局員でもあったレフ・トロツキー氏とその継承者が唱えた思想である。

 トロツキー氏は、ウクライナのへルソン県生まれで、両親はユダヤ系の富農であったが、信心深くはなかった。

 トロツキー氏は、国際港湾都市であったオデッサのドイツ人学校、その後ニコラーエフの大学で学び、マルクシズムに触れ共産主義者になった。

 彼はスターリンの一国社会主義に反対し、「世界同時革命」を唱えたことで知られている。スターリンとの権力闘争に敗れ、最終的には亡命先のメキシコで暗殺された。

■世界同時革命思想と一神教の選民思想

 世界同時革命思想は、現代のグローバリズムにもその思想的系譜がつながっている。

 このようなグローバリズムと共産主義の共通の思想的基盤は、ユダヤ教の選民思想にある。

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 すなわち、ナイル川からチグリス・ユーフラテス川までの土地は神がユダヤ人に約束した土地であるとされ、そこに住む異教徒はすべて攻め滅ぼすことが、神の定めた律法に従う行いとされている。

 現在のガザ地区におけるイスラエル軍によるパレスチナ人非戦闘員に対する虐殺行為もこのような宗教的背景があると言えよう。

 マルクシズムによれば、無産階級のブロレタリアートが国際的に連帯して暴力革命を起こし、資本主義体制を打倒し、ブロレタリアート独裁による世界的な共産主義統一政権が樹立され搾取なき世界が実現するとしている。

 マルクシズムを打ち立てた共産主義理論家のカール・マルクスの父は熱心なユダヤ教のラビであり、マルクスは生涯にわたり父を尊敬していた。

 旧約聖書に記された、上記の選民思想に通ずるプロレタリアート独裁主義および、いずれは「ハルマゲドン」において世界の善と悪との決戦である「世界最終戦争」があり、その後救世主の再臨と千年王国が実現するとするユダヤ教の終末論的歴史観の構造は、マルクスの共産主義思想と類似している。

 異なる点は、共産主義は唯一絶対神への信仰を否定し、唯物主義に立っている点である。

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 文化共産主義という新たな装いをまとった左翼思想は、教育界、芸術界、学界、メディアを覆い、世論誘導を容易にしている。

 現代のキャンセル・カルチャーと呼ばれる、米国民主党支持者の極左勢力による言論封殺の風潮も、その表れと言える。

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 このような積極的対外介入主義をとるネオコンの対外政策の系譜をブレジンスキー、オルブライト両氏の後を受けて継承してきたのが、ヌーランド氏である。

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 以上のような見方は陰謀論などではなく、事実に基づく分析の結果である。これまで紹介したグローバリズムに対する批判的な見解は、欧米では半ば常識になってきている。(以下ソース)

2024.4.8(月)
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