厚生労働省は来年4月から、育児休業給付の延長審査の厳格化に乗り出す。
延長には保育所に入れなかったことを示す書類が必要で、落選狙いで人気の保育所だけに申し込みをするケースが相次いでいた。
提出書類を増やし、落選目的だと判断した場合は、延長は認めない。(都梅真梨子)

育児・介護休業法は、育休の対象期間を原則、子どもが1歳になるまでと定めている。雇用保険法に基づき、最大で休業前賃金の67%を受け取れる。例外として、最長で2歳になるまで延長が可能だ。

申請には、保育所に落選した場合、自治体が保護者に発行する「保留通知書」が必要で、職場を通じてハローワークに提出する。保留通知書をもらうため、人気が高く、入りにくい保育所にあえて申し込み、落ちる事例が続出していた。

東京都内で子ども2人を育てる30歳代の教員女性は4月上旬、自宅の最寄り駅近くの保育所に、5月から次女(1)を入所させるための申し込みをした。広い庭があって人気が高く、倍率は約20倍だった。
女性は来年4月からの復職を希望しており、「子どもを入れるなら、絶対にここがいいけど、今回は落ちてほしい」と願っていた。
夫が勤める会社は、男性育休の利用に理解が低い。女性も学年主任を任されるベテランで、短時間勤務制度の利用は難しいという。

「あと1年は子どものそばにいてあげたい」と考えており、最近、地元自治体から入所できなかったことを示す書類が届いて胸をなで下ろした。
「落選狙いの申し込みはみんなやっていて、悪いこととは思わない。当選してしまったら辞退するつもりだった」と明かす。

◾自治体の業務逼迫

保育所の当落を決める自治体は、入所倍率をホームページなどで公開しているため、落選を目的とした保護者はこれらを参考に申し込みをしている。

自治体には「落選する方法を教えてほしい」「当選したが、本当は育休を延長したかった。どうしてくれるのか」といった保護者からの問い合わせが次々と寄せられ、業務逼迫(ひっぱく)の一因にもなっている。

東京都荒川区が、昨年4月の入所申し込みを分析したり、保護者に聞き取ったりしたところ、1367件のうち、12%にあたる169件が落選狙いだった。

本当に入所させたい保護者が落選してしまう例もある。
担当者は「全ての希望者が入所できるよう、書類の内容を精査し、事前面談を行うなど業務の負担は大きい」とこぼす。

(略)

◾育休取得者 10年前の倍

政府が給付の対象期間を原則1歳にしているのは、長期の育休が職場の人手不足を加速させ、復帰後のキャリア形成にも支障をきたす恐れがあるためだ。

2022年度の育休取得者は、48万人(女性38万人、男性10万人)で、10年前の約2倍となった。政府は17%にとどまる男性の育休取得率を25年度までに50%、30年度までに女性並みの85%に引き上げるとしている。

厚労省の担当者は「男性の育休取得率の向上や、時短勤務などの両立支援策を拡充することで、子育て世帯をバックアップしていきたい」と話す。

子ども政策に詳しい東京大の山口慎太郎教授(労働経済学)は「保育所に通うことは、子どもの発達にプラスになる可能性が高い。給付の財源にも限りがあるため、審査の厳格化は合理的だ」と指摘する。

◆育児休業給付=育休開始から180日までは休業前賃金の67%、これ以降は50%を支給する。育児休業中に就労するなどして賃金を得た場合は、一部減額されることもある。

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https://news.yahoo.co.jp/articles/4b6560dc857ab98328822cfeab8118fc1d3d3fc9

[読売新聞]
2024/5/3(金) 11:46配信