交通違反をした運転者が対象の運転免許講習で、県警は四月から歌手さだまさしさんの楽曲「償い」を流している。
交通死亡事故を起こして遺族への送金を続ける男性が初めて、遺族から手紙を受け取る内容の歌詞。

聴きながら、涙を流す受講者もいる。交通事故死者数が昨年まで十四年連続で全国ワーストの愛知。
運転者の心に訴えかけ、事故防止を目指す。

名古屋市天白区の運転免許試験場であった講習。始まる前の待ち時間に、ギターの音色とさださんの歌声が流れ始めた。
手元のスマートフォンを触り続ける受講者もいたが、じっと聴く人も。

「償い」は、さださんが知人の実話を基に作詞作曲した約六分の楽曲。車で男性をはねてしまった「ゆうちゃん」の姿を同僚の目線で歌う。
ゆうちゃんは給料日のたびに遺族に金を送り続け、ある日、男性の妻から初めて手紙を受け取る。
歌詞は、こう心情をつづる。「償いきれるはずもないあの人から返事が来たのが ありがたくてありがたくて−」

運転中に携帯電話を使用する違反をし、講習を受けた刈谷市の主婦(62)は「反省の気持ちがある中で聴いたので身に染みました。
運転する責任の大きさを感じます」と話した。

さださんの「償い」は、昨年六月から警視庁の講習でも使われている。県警も、免許更新の際を初心に戻ってもらおうと、楽曲利用に必要な手続きをした。
運転免許試験場や、東三河運転免許センター(豊川市)などで行う違反者ら向けの講習で流している。

受講者の名古屋市の男性(52)はかつて、バイクとの衝突事故を起こしたことがあるという。「ハンドルを握りたくない気持ちはあるけど、運転せざるを得ない。
悲しい曲で聞き入ってしまった。事故を起こしてはいけないと改めて思いました」と話した。

運転免許試験場長の後藤里志さん(55)は「受講したみなさんは、ハンドルを握るときにこの曲を思い出してほしい」と話した。(中山梓)

配信 2017年5月21日

中日新聞
http://www.chunichi.co.jp/article/aichi/20170521/CK2017052102000054.html