路線バスや観光バスなどの運転士が運転中にスマートフォンや携帯電話を操作し、国土交通省に報告のあったケースが昨年1月以降、少なくとも33件あることがわかった。自転車の男児をひいて死亡させる事故も起きていた。国や業界団体は危険な「ながら運転」の禁止徹底を呼びかけるが、歯止めがかからない。

 運転中にスマホや携帯電話を使うのは道路交通法で緊急時やハンズフリーでの通話を除いて禁止されている。業界団体の日本バス協会は今年1月、スマホなどの使用禁止の徹底を求める指針をまとめたが、2月以降に7件起きるなど後を絶たない。

 国交省自動車局への取材をもとに、朝日新聞がバスの運行事業者に確認した。昨年1月から今年4月までに把握できたバスの「ながら運転」は33件。内訳はスマホが27件、携帯電話が4件、タブレットが1件などで、走行中や信号待ちの間などに操作していた。

 事業別にみると、路線バス27件、観光など貸し切りバス5件、企業の送迎用バス1件。23件は営業運転中で、乗客などの通報で発覚するケースが目立った。

 端末の使用目的は通話が3件で、残りはスマホの画面を見たものが大半だ。スマホの使い方は▽ゲーム6件(ポケモンGO5件、モンスターストライク1件)▽メール5件▽無料通信アプリ「LINE」5件▽写真や動画を投稿3件▽チャット1件などだった。

 死亡事故は昨年3月に東京都台東区で起きた。交差点を右折中の大型観光バスが、自転車で横断歩道を渡っていた小学1年生の阿部余木(よぎ)君(当時7)をひいて死亡させた。運転士は事故の直前までLINEでメッセージを見ていて、スマホを片手に運転していたという。右側ばかりを見ていて、向かい側から来た余木君には「全く気づかなかった」という。

 仙台市では昨年1月、回送中の路線バスが女性をはねて重傷を負わせた。運転士がスマホでメールを確認していたという。

 バスの「ながら運転」をめぐっては昨年10月、大阪で観光バスの運転士がポケモンGOをしている動画がネットに投稿され、国交省が11月に禁止の徹底をバス協会などに通知。その後、国交省は指導を強化し、問題が起きたすべてのケースを監査することにした。国交省は33件のうち27件を監査し、2件を車両使用停止、21件を文書警告とした。

 国交省は「プロの運転士としては数があまりに多い。一方で、問題が発覚したのは乗客が通報したり事故になったりしたケースで、実際はもっと多いだろう。監査などで厳しく対応したい」(自動車局安全政策課)としている。(北川慧一)

2017年5月23日5時1分 朝日新聞
http://www.asahi.com/articles/ASK526H50K52UUPI005.html
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