青森県が実施したがん検診に関する調査結果について、NHKが「がん検診で4割の患者が見落とされていた可能性がある」と報道したことに対し、
国立がん研究センターは13日、「調査は予備的なもので、結果から検診の見落としを評価することは困難」との声明を発表した。

NHKは6月29日のニュースで「青森県が県内10町村の検診受診者を調査した結果、胃がんで40%、大腸がんで42.9%、子宮頸(けい)がんで28.6%でがんが見落とされた可能性がある」と報じた。

これに対し、声明は「40市町村ある青森県の10町村を対象にした予備的調査で、見つかったがんもそれぞれ10例以下。
2011年度の検診受診者に対し観察期間が11〜12年末と短く、結果から検診見落としを評価することは困難」としている。

青森県の調査の目的は、胃、大腸、子宮頸部など五つのがん検診者の台帳と、がん患者の登録データの予備的な照合。
調査の中で、胃がんで60.0%、大腸がん57.1%などと、それぞれの検診で、がんと診断できた割合が明らかになった。

報道は、これらの割合を100%から引き算して、残りを「見落とし」の割合とした。
しかし、国際的には検診受診後、一定の間隔をあけて次の検診までの間にがんと診断されたケースを「見落とし」と定義。4割を「見落とし」とした報道は不適切としている。

がん検診では、がんではない人をがんと誤って診断して不利益を与える可能性もある。
このため、ある程度発見できない割合を許容している。乳がん検診の場合、70〜85%でがんと正しく診断できれば有効とされている。

がん研究センターの斎藤博検診研究部長は「検診の精度調査の意義は大きいが、小規模の予備的なもの。それを確定的に扱うのは不適切」と話している。【高野聡】

■「放送は調査結果に基づいたもの」NHK

NHK広報部は「今回の調査は青森県ががん対策に役立てるため全国に先駆けてがん登録データを活用して行ったもので、放送は調査結果に基づいてお伝えしました。
その中では、県内10町村のデータであることや、青森県がサンプル数が少ないとして『今後、市部も含め複数年度調査を行うこと』もお伝えしています」とコメントした。【屋代尚則】

配信 2017年7月13日 19時17分(最終更新 7月13日 23時02分)
毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20170714/k00/00m/040/031000c