■県や業界、改善急ぐ

富山県内でタクシーの評判が芳しくない。不満の矛先は料金の高さや「流し」営業の少なさ、拙い接客に向けられている。北陸新幹線の開業で来県者が増える中、県やタクシー業界は改善を急ぐ。汚名返上なるか−。(山本真士)

五月に県庁であった「タクシードライバー接遇ブラッシュアップ会議」。県タクシー協会の土田英喜会長は「全国的に見て、一定の距離を走ると料金が高いことは事実。相当高い部類という認識は持っている」と率直に認めた。

県内の初乗り料金は、普通車が五百九十〜六百二十円。石川県金沢地区の六百七十〜七百円、福井県の六百二十〜六百六十円と比べ、決して高くはない。しかし、加算料金が高いため、十キロ、二十キロと長距離を乗ると、富山を上回るのは全国で秋田、山形、福島の東北三県のみとなる。

原因は利用の少なさ。タクシー会社は売り上げを確保するために料金を上げざるを得ず、さらに利用を減らす悪循環が起きている。流しを街でほとんど見ないことも、需要に合わせて台数を減らした結果という。

改善に向け、富山県は県内企業を対象にアンケートを実施。来県者のタクシーの評判は、「普通」(43・5%)、「分からない」(34・1%)との回答が多い中、「悪い・やや悪い」が計12・6%で「良い・やや良い」の計9・8%を上回った。不満点として「流しのタクシーがいない」「運賃が高い」「接遇・応対が良くない」が挙がった。

石井隆一知事は、今月三日の会議で「多くの来県者が初めて出会う県民はタクシードライバー。良い評判がある一方で、『残念だな』という指摘も企業や県民からいただいている。何とかしたい」と訴えた。

県や業界は既に接遇の向上には取り組んでいる。「観光ガイドドライバー」の養成講座を二〇〇八年から続け、一三年からは覆面調査で上級ドライバーの表彰も行う。ただ、料金問題の解決は容易ではない。業界は「安いにこしたことはないが、労働集約産業であり、賃金の話につながる」「県内のドライバーの年収は一般労働者に比べかなり低い」と難色を示す。

抜本的な解決への糸口が見えない中、県は今秋にも第三回会議を開き、対策をまとめる方針だ。

■運転手「需要減る一方」

現場で働く人たちはどう考えるのか。富山駅で客待ちをしていたドライバー歴十年の六十代男性は「接客が下手な人はいる。でも、それは個人差。全国どこへ行っても変わらない」と語り、富山だけが接客が悪いという見方を否定した。

むしろ、問題視したのは地元の乗客のモラル。「お酒が入ると横柄な態度になるお客さんが少なくない。荷物を運び入れるときにあごで使う人も。こっちも人間だからかちんとくる」と過去の体験を振り返った。

利用が少ない原因は、自家用車の保有率の高さや、鉄道と路面電車、共同利用自転車をはじめとする他の交通手段の充実ぶりだと分析。「富山はタクシー文化が根付いていない。需要は減る一方だ」と力なく話した。

配信2017年8月20日
中日新聞
http://www.chunichi.co.jp/hokuriku/article/news/CK2017082002100018.html