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【9月5日 AFP】米国のここ最近の動物人気で最初に火が付いたのは、首都ワシントン(Washington D.C.)のスミソニアン国立動物園(Smithsonian National Zoo)で飼育されているジャイアントパンダのバオバオ(Bao Bao、宝宝)とベイベイ(Bei Bei、貝貝)だった。次は今年4月、ニューヨーク(New York)州の動物園でキリンが注目を浴びた。そして今、オハイオ(Ohio)州シンシナティ(Cincinnati)の自慢の種になっているのは、赤ちゃんカバのフィオナ(Fiona)だ。

 全米の動物園はインターネットで人気を呼びそうな次の「アイドル」を探している。この戦略は、国民の心をつかみ、圧倒的なクリック数を獲得できるが、裏目に出ることもある。

 今年1月、体重わずか13キロという未熟児として生まれたフィオナ。8月29日には、フェイスブック(Facebook)の新たな動画配信サービスでフィオナを主役にしたシリーズ「フィオナ・ショー(The Fiona Show)」も始まった。シンシナティ動物園(Cincinnati Zoo and Botanical Garden)はそれまで、ソーシャルメディアでフィオナの情報を微に入り細をうがって伝えてきたが、初日には誕生時の未公開映像を公開すると宣伝。「不細工」だが愛らしくてたまらないこの赤ちゃんカバに全米はとりこになり、ハッシュタグ「#TeamFiona」まで生まれている。

 シンシナティ動物園が公開した映像の1本には、フィオナが誕生直後に女性飼育員の胸に抱かれ哺乳瓶を飲む姿が映っている。今は生後7か月で、体重は標準に近い200キロになった。

「フィオナを有名にする計画なんてありませんでした。たまたまです」と、同園の広報部長ミシェル・カーリー(Michelle Curley)氏はAPFに話した。

 カーリー氏によると、フィオナをスターにするという考えは同園にはなく、フェイスブック側から、新しい動画サービス「ウォッチ(Watch)」でフィオナの映像を配信しないかと提案されたのだという。その結果、フィオナ人気でこの夏の来園者数は増加し、宣伝費用をかけずに増収したことを同氏は認めた。

■金銭的な動機に基づく「偽善的な宣伝」

 米国では近年、パンダからワシに至るまで、動物園での出産は囲いの中を写すライブカメラで配信され、インターネットで大勢の人々に見守られながら行われる。

 非営利団体「アニマル・ソサエティー協会(Animals and Society Institute)」のアイビー・コリアー(Ivy Collier)氏は、動物園観察と教育によって動物保護と福祉への関心が高まるのではないかと期待を寄せる。

 だが、社会学者でニューヨーク州立大学パーチェス校(Purchase College, the State University of New York)のリサ・ムーア(Lisa Moore)教授は、そうした戦略は、環境保護や動物保護を訴えているように見せ掛け、実際は金銭的な動機に基づく「偽善的な宣伝」だと主張する。

「極めてわざとらしい。そして矛盾でしかない。動物に近付く機会を与えることが目的のはずなのに、実際は人と動物との触れ合いを断っている。結局のところ、人々は家から一歩も出ずにウェブカメラを見るだけになるのですから」

 ニューヨークに本拠を置く世界動物保護協会(World Animal Protection)のエリザベス・ホーガン(Elizabeth Hogan)プログラムマネジャーはAFPの取材に対し、動物たちがインターネットの人気者になるのは必ずしも悪いことばかりではないとしながらも、誤解が生じる可能性について警鐘を鳴らした。

「飼育されている動物の動画でその動物に関する背景や環境まで伝えていないと、野生動物の行動や欲求について現実離れした認識しか生まない可能性があります」(c)AFP/Shahzad ABDUL

2017年9月5日 15:11 発信地:ワシントンD.C./米国