2017年9月11日、楽天は、これから農業に就こうとする人の育成支援を柱とする連携協定を広島県神石高原町と締結したと発表しました。具体的には、農地や農機具の貸し出しから、ベテラン農家による技術伝承のサポートを受けられるとのこと。

今回は、こうした取り組みとも関連する農業や漁業、牧畜など、第一次産業で働く人の年収を調べてみました。

●自然が頼みの第一次産業は、ハイリスクハイリターン

第一次産業と一口に言っても、農業と水産業や林業では働き方が大きく異なります。

町の暮らしにたとえると、自分の店で商いをしているのが一般的な農家。漁業や牧畜では船や牧場などの設備を持つ人が町工場の経営者で実際に現場にも立ち、乗組員や作業員に給料を支払う仕組みです。

林業にいたっては、山単位で設備を持っているわけですから、さらにその差は大きくなります。

農林業にせよ漁業にせよ、自然が頼みですから、天候が何よりのリスク要因です。

年によっては「高原レタスで年収2,000万」などの声も聞きますが、市場との需給バランスが命なので、豊作すぎてもまた大量放棄せざるを得ないなどの現実があります。

農業はサラリーマン感覚では計り知れないハイリスク・ハイリターンの世界なのです。

●コメ農家53万円、養豚1,349万円の実態

2017年、農林水産省が発表している統計では、生産農業所得(2015年)は全体として前年に比べ16.1%の伸びを示しています。

ただし稲作(個別経営:以下同)は53万円という低調ぶりです。コメ専業農家は減っていますから、畑作=272万円、露地野菜=214万円、施設野菜=497万円などで補うケースがほとんどでしょう。

「施設」とはビニールハウスなどで、設備費はもちろん自己負担。生産農業所得上位5都道府県は、北海道、千葉、茨城、鹿児島、青森となっています。

酪農の平均所得は大台の1,054万円。子牛を生産・販売する繁殖牛=376万円、大きく育てて出荷する肥育牛=1,243万円のほか、養鶏でも採卵は657万円、ブロイラー養鶏=1,036万円と分かれ、養豚は1,349万円にのぼりました。

北海道とそれ以外の都府県で所得差は2倍(北海道1,613万円、他の都府県845万円)となっており、酪農王国ぶりが実証されています。

●漁師の世界は平等分配が基本

漁業は、大きく漁船漁業と養殖業に分かれます。やはり農水省の統計(2015年)では、漁船漁業の漁労所得が288万円です。

養殖はモノによって大きく異なり、マダイが376万円とそこそこなのに比べ、ブリ1,081万円、ホタテガイ1,060万円、カキ類1,154万円と、まぶしい数字が並びます。

さらにワカメ類73万円、ノリ類907万円、真珠1,248万円と、取り扱う種類によっても年によってもかなりバラつきがあるのは確かです。

漁船漁業の場合も漁法がさまざまに異なるので一口には言えませんが、銚子近海でイワシやアジなどを採る中型船は2隻1組で網を張り、一度の漁に出る乗組員は数10人。

水揚げは、船主に株代(かぶしろ)、乗組員には人代(ひとしろ)と呼ばれる報酬で分配されます。その割合は船ごとに取り決められ、必要経費を差し引いた水揚げ額の約3割が株代、残りを人代として、一人前の乗組員には均一に分配。経験の浅い新人は7割ぐらいで、船長や機関士には手厚くという方式が取られています。

●「農メン&農ガール」を目指せるネット求人サービスも

日本の食料自給率は、平成26年度カロリーベース39%まで落ちており、世論調査でも82%が「不安がある」と答えています。自給率を上げるには農業や水産業などの第一次産業人口を増やすことが必須ですが、その実態は、農学博士で東京農業大学名誉教授の小泉武夫先生も「食を外国に委ねるのは独立国家ではない」と嘆いているように、高齢者に頼っているのが現実です。

若者に働いてもらいやすくするため、政府が動きはじめています。「第一次産業ネット」というインターネットを通じた求人活動です。リスクを背負って農業や漁業を継承するという考え方ではなく、あくまで若い労働力の提供。業種や勤務地、職種による違いが一目でわかるほか、農業体験をしてもらう「ファームステイ」や新卒から経験を重ねて農場主を目指す「農業研修生」などの制度も人気のようです。食料生産だけでなく、競争馬の飼育や観光農園まで、バラエティのある一次産業を担う「農メン&農ガール」に期待が大きく高まります

配信2017年10月9日
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