2017年10月14日 夕刊

 【ジュネーブ=共同】日本政府が十一月に行われる国連人権理事会の対日人権審査に向け提出した報告書で、ヘイトスピーチへの規制強化について「日本でそれほどの人種差別の扇動が行われている状況とは考えていない」として、不必要との認識を示していることが十三日、分かった。国連人権高等弁務官事務所が報告書を公表した。

 報告書は、昨年六月にヘイトスピーチ対策法を施行し、在日コリアンらへの「差別的言動をなくすよう基本理念と施策を定めた」と説明した。しかし対策法には禁止規定や罰則がなく、人権団体などは不十分だと批判、十一月の審査では各国から是正を求める意見が出る可能性がある。

 二〇一二年の前回審査の結果出された勧告には「立法レベルで外国人排斥の発言を禁止する措置を取ること」との項目が盛り込まれた。また、人種差別の扇動などに対し処罰措置をとることを義務付けた「人種差別撤廃条約」第四条の一部条項の留保撤回も求めた。これに対し、報告書は「正当な言論をも不当に萎縮させる危険」を冒してまで処罰措置を取るほどの人種差別思想の流布はみられないと強調した。

 勧告では、東京電力福島第一原発事故後の福島の住民の健康と生活の権利の保護も求めたが、報告書は「政府は住民の中長期的な健康管理を可能とするため福島県に財政的、技術的な支援を行っている」と指摘した。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201710/CK2017101402000265.html