北海道の「ジンギスカン」には大きく分けるとふたつの味がある。

肉をそのまま焼き、つけダレの味で食べる後づけ系と、肉をあらかじめ甘辛いタレに漬ける漬け込み系の2系統だ。

道央の札幌から道南にかけて普及した後づけ系の聖地は、札幌市豊平区。種羊場のあった月寒(つきさむ)はその昔、「ツキサップ」と呼ばれていた。

生系(後づけ系)ジンギスカンの祖と言われる「ツキサップじんぎすかんクラブ」の名前などにその名残を見ることができる。

豊平区には文字通り「羊ケ丘」という地名もあり、この名前もめん羊事業に由来する。「羊ケ丘」は1944(昭和19)年の地名変更で生まれた、まだ比較的新しい名前なのだ。

さて、肉に話を戻すと札幌から道南にかけては後づけ系が多い。

北海道の地形は札幌から南西へ100キロほど行った、長万部町あたりでキュッとしたくびれが発生し、そこから南へ80キロほどで道南の函館に到達する。

肉に味をつけずに焼き、後からタレにつけるというシンプルさに加えて、地勢上からもほぼ一本道で情報が曲がらずに伝わりやすかったと考えられる。

一方、札幌から北東に数十キロ離れた滝川で生まれた漬け込み系ジンギスカンはそこからさまざまな形で道北、道東方面に拡散していく。

例えば道北の名寄(なよろ)周辺には「煮込みジンギスカン」という様式がある。この地域のジンギスカンは漬け込みダレの量が多く、タレごと煮込む食べ方が多かったという。

通常、ジンギスカンは中央が盛り上がった半球状のスリット入りの専用鍋を使うが、タレの多い「煮込みジンギスカン」には一般の家庭にあるような普通の鍋やフライパンが使われる。
家庭料理として伝えられてきたからこそのスタイルだと言えよう。

近年、名寄市ではこの「煮込みジンギスカン」をご当地グルメとしてプロモーションに活かす施策を打ち出し、現在では市内の飲食店でも口にすることができるようになっている。

滝川で生まれた漬け込み系は、道内でも極寒の地域で、より汁気の多い形に進化したのだ。
一方、道東の十勝には、また違うスタイルが伝わっていた。 =続く

■松浦達也(まつうら・たつや) 編集者/ライター。レシピから外食まで肉事情に詳しく、専門誌での執筆やテレビなどで活躍。「大人の肉ドリル」に続く新著「新しい卵ドリル」が好評発売中。

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2017年10月18日 17時6分 ZAKZAK(夕刊フジ)

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