http://jp.reuters.com/article/softbank-group-results-breakingviews-idJPKBN1DA0MC

2017年11月10日 / 07:58 / 1日前更新

Quentin Webb

[香港 10日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 日本は、数字や複雑なロジックが絡む数独などの頭脳パズルが大好きだ。新興企業投資に巨額の資金を調達し、チップ開発から通信事業、中国電子商取引大手アリババ・グループ・ホールディング(BABA.N)にまで関心の幅を広げるソフトバンク・グループ (9984.T)は、急速に企業界の「頭脳パズル」になりつつある。

ソフトバンクが6日発表した4−9月期決算資料に小さな文字で書き加えられた注釈を見ると、孫正義社長が率いる巨大帝国の構造がいかに複雑になり、利益相反の種を内包するようになっているかを知ることができる。

ソフトバンクが設立した「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)」事業は今や、約980億ドルもの資金力を持つに至った。前期比45億ドルの増加で、1000億ドルの調達目標に近づいている。

だが新たな資金はすべて、ソフトバンク本体が拠出したものだ。さらに、そのほとんど、または全てが、中核となるビジョン・ファンドではなく、デルタ・ファンドという傘下の別口ファンドに投じられた。ソフトバンクは、所有する中国の配車サービス大手、滴滴出行(ディディ・チューシン)の株式36億ドル分を、これまで表に出していなかったこのデルタに移したという。

この謎めいた運用を説明するカギは、配車サービス事業者間の競争関係や、複雑な投資構造にある。

ビジョン・ファンド最大の出資者であるサウジの「公共投資基金(PIF)」は、米配車大手ウーバーの大口出資者でもある。滴滴出行は、ウーバーの中国事業を吸収して中国市場からウーバーを撤退させている。PIFにしてみれば、滴滴出行の大株主でもあるファンドに対する出資は、認可されない可能性があった。さらに事態を複雑にしたのは、孫社長自身がウーバーへの出資を検討していたことだ。

だが、それでもまだ謎は残る。まず、ソフトバンクが所有する残りの滴滴出行の株式14億ドル分はどこにあるのか。それも今後、デルタ・ファンドに移されることになるのか。

第二に、ソフトバンク本体からビジョン・ファンドへの出資が最大280億ドルになると以前発表された時、デルタのような姉妹ファンドはこの枠外となることを投資家は理解していただろうか。ソフトバンクによる出資額は、今回約16%増加した。増加分の45億ドルだけで、世界の多くの投資ファンドを上回る規模だ。

このような困惑は、頻繁に起こるようになっている。数カ月前、ソフトバンクは米半導体大手エヌビディア(NVDA.O)の大株主となったことを唐突に発表した。こうした対応は、将来のさらなる頭痛の種の予兆かもしれない。

例えば、ファンドの投資対象としてもソフトバンク本体の事業としても適合しうるようなビジネスはどう扱うのか。また、ビジョン・ファンドを支援する米アップル(AAPL.O)や半導体大手クアルコム(QCOM.O)のような出資者は、結果的に自らを相手に投資競争を行う事態に陥るのか。

こうした状況を尻目に、孫社長は新たに2000億ドル規模のファンド設立を検討しているもようだ。最高難易度の3次元アルファベット数独でさえ簡単にみえるほど、構造は複雑だ。