神奈川県座間市のアパートから9人の遺体が見つかった事件で警視庁捜査1課は20日、死体遺棄容疑で逮捕した白石隆浩容疑者(27)を殺人容疑で再逮捕する。捜査関係者によると、白石容疑者は「金目当てだった」などと供述しているという。だが、多額の現金を所持しているとは考えにくい若い女性ばかりが標的にされた点など「動機は釈然としない」(捜査幹部)。捜査1課は20日以降、一連の事件の全容解明を本格化させる。

 ■不可解な動機

 白石容疑者は当初、「金目的だった。楽して生活したかった」と供述した。実際に最初の被害者には事前に所持金を聞き、51万円を口座から引き出させ、現場アパートの入居費用や自分の生活費などに充てていた。

 しかし2人目以降の犠牲者が多額の現金を持っているとの情報もないまま、誘い出していた。また白石容疑者は6月ごろ、父親に自殺をほのめかしていたとされるが、逮捕後は「ツイッターに書いた自殺願望はうそだった。死ぬつもりはなかった」と供述しているという。

 捜査幹部は「一連の事件を貫く動機があるのか、ないのか。どこかの時点で動機が変わった可能性もある」と話す。

 ■手当たり次第

 「初めて誘い出すことに成功した人だった」。捜査関係者によると、白石容疑者は最初の犠牲者になった神奈川県厚木市の女性(21)について、こう供述しているという。

 白石容疑者がツイッターで自殺願望がある女性を探し始めたのは、今年3月。茨城県警に職業安定法違反容疑で逮捕され、保釈中の時期だった。

 当初は相手の関心を引けなかったが、「8月ごろから、自殺の知識を付けて誘ったら興味を持つ相手が増えた」と話しているという。実際、厚木市の女性と初めて会ったのは8月13日で、その10日後に殺害したとみられている。

 白石容疑者は「誘い出し、会えたら殺害した。数日で何人もやった」「3〜8人目の順番は覚えていない」と供述しているという。

 これまでの捜査で、9月15日以降の同月中に4人の女性が事件に巻き込まれた可能性があることが分かっている。捜査幹部は「手当たり次第に被害者を物色した印象が強い」と話す。

 ■ずさんな隠蔽工作

 白石容疑者は被害者の携帯電話について、「足が付くから電源を切った」「なたで壊したり、きりでこじ開けて中の基板を壊したりした」と供述。事件の発覚を免れようと隠蔽(いんぺい)工作をしていたことがうかがわれるが、現場アパートには2台の携帯電話が新聞紙にくるまれた状態で残されていた。白石容疑者は「遺体の解体に疲れそのままにした」と供述しているという。

 室内からは、被害者のキャッシュカードや診察券など多数の所持品も見つかった。捜査関係者は「事件を繰り返すうちに、隠蔽がずさんになったのでは」とみる。【深津誠、春増翔太、山本佳孝】

配信11/19(日) 23:20
毎日新聞
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171119-00000057-mai-soci