真冬並みの寒波が到来した19日。三陸沿岸の岩手県山田町と宮古市を南北に結ぶ自動車専用道路、山田宮古道路(山田IC−宮古南IC間、約14キロ)の開通式に立ち会った。会場は南北に長い丘陵の東側斜面を削り取って整備された宮古南IC近くの本線上。式典参加者の喜びの表情には大きな期待も同居していた。

 同区間の開通で、すでに開通していた山田道路(山田南IC−山田IC間、約7・8キロ)と宮古道路(宮古南IC−宮古中央IC、約4・8キロ)がつながり、約27キロの高速ネットワークが形成され、震災前は夢のまた夢だった三陸沿岸道路の全線開通がいよいよ現実味を帯びてきたからだ。

 三陸沿岸道路は東日本大震災で大きな被害を受けた青森、岩手、宮城3県の三陸沿岸を南北に縦断して青森県八戸市から仙台市に達する約360キロ。震災の復興道路に位置付けられ、国の平成23年11月補正で事業化されていなかった全区間が事業化され、32年度全線開通を目標に急ピッチで整備が進められている。

 山田宮古道路は震災後事業化区間で初めて開通した区間だ。震災前の三陸沿岸道路は数キロの区間開通まで事業化から14年ほどかかっていた。震災前は全線開通など夢のまた夢で、「自分の目の黒いうちは到底無理と諦めていた」というのは山田町豊間根地区の八千代地区自治会長を務める佐々木建彦さん(71)だ。

 それが事業化からわずか6年で開通。全線開通はもはや夢ではなくなった。実現すれば、青森県八戸市−仙台市間は8時間が5時間▽岩手県宮古市−仙台市間は5時間が3時間▽同釜石市−仙台市間は4時間が2時間半▽同陸前高田市−仙台市間は3時間が1時間40分−と、それぞれ所要時間が短縮される。

 「三陸沿岸には震災前、国道45号しかなかった。しかし、震災で寸断された。経済の動脈で津波の影響を受けず、災害時の避難場所にもなる三陸沿岸道路は“命の道”。一日も早く全線開通してほしい」と、佐々木さんも期待を寄せる。

 県と共同で海産物を試験的に三陸沿岸道路を使って仙台市に輸送している宮古市のJFたろう加工場の佐々木英之工場長代理は「全線開通で仙台市と直結できれば生ウニやアワビなど新鮮な海産物の売上増も期待できる。その先の首都圏も視野に入ってくる」という。

 工事を担当する国交省三陸国道事務所の平岡弘志副所長は「三陸沿岸道路は無料で積雪もほとんどない。積雪が多い内陸の東北道に代わる冬場の安定した物流ルートにもなりえる。全線開通は物流や観光などに大きな効果が見込める」と話す。

 来年6月、北海道室蘭港−岩手県宮古港間にフェリーが就航する。全線開通を前提に積載トラックの仙台市までの経費を主要路線の北海道苫小牧港−青森県八戸港間のフェリーと比較したある試算では、宮古港から三陸沿岸道路の方が若干安く、冬場の物流ルートが将来的に三陸沿岸道路にシフトする可能性も十分にあるという。

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