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12月9日 18時36分

小児がんと闘う子どもたちを支援しようと、同じ経験がある小学4年生の男の子が、横浜駅の近くで手作りのレモネードを販売して募金を呼びかけました。

「レモネードスタンド」と呼ばれる募金活動をしたのは、脳腫瘍で闘病した経験がある横浜市の小学4年生、榮島四郎くん(10)です。
9日は、横浜駅の近くで、友達とホットやアイスの手作りのレモネードを1杯100円から販売して募金を呼びかけました。榮島くんの友達の中には、小児がんの治療法や薬ができるのを待ちながら亡くなった子もいるということで、この1年間、夏休みなどを使って活動を続けてきました。

募金をした39歳の男性は「身近に小児がんの子はいませんが、少しでも協力したいと思いました。知識もないので学んでいきたいです」と話していました。

榮島くんは「たくさんの人が来てくれてとてもうれしいです。小児がんについて知ってもらい薬や治療法の開発が進んでほしいです」と話していました。

これまでに寄せられた募金は、小児がんの研究や、来年6月に出版される、病気への理解を深める絵本の制作に役立てられるということです。

広がる「レモネードスタンド」

手作りのレモネードを販売する「レモネードスタンド」と呼ばれる活動は年々、広がりを見せています。

この活動は、アメリカで小児がんで闘病していた女の子が「自分と同じように病気で苦しむ子どもを助けたい」と自宅の庭でレモネードを販売したことが始まりとされています。女の子はその後亡くなりましたが取り組みは広がり、日本では4年前、医師や患者などでつくるNPO法人が「レモネードスタンドジャパン」というプロジェクトを立ち上げ、各地の活動を支援しています。

NPO法人によりますと、アメリカの女の子の話が学校の授業の題材になることもあり、文化祭などでレモネードスタンドを開く生徒や学生が増えているということです。法人が準備に関わった活動は、最初の年は10件余りでしたが、今年度は先月末までに105件に上り、4年間で寄せられた募金は800万円を超えるということです。募金は治療や研究のため、「日本小児血液・がん学会」への寄付などにあてられています。

出版を目指す絵本とは

榮島くんが出版を目指しているのは「しろさんのレモネードやさん」という題名の絵本です。自分の体験や思いを作文教室の先生が文章にし、趣旨に賛同したイラストレーターが無償で挿絵をかいています。

物語は、榮島くんがモデルの「しろさん」が「レモネード遊園地」で「レモンちゃん」というキャラクターと出会う場面から始まります。しろさんがレモンちゃんに、小児がんの治療を受けていたことを伝え、「お家にも帰れなかった。注射は痛くて薬で髪の毛も抜けちゃった」と体験を語ったり、高額な薬を必要としている友人のことを話したりしていて、小児がんの子どもの実情がわかる内容になっています。

やがて2人は、同じように小児がんと闘う子どもたちのために募金を集めようと、レモネードスタンドの活動を始めます。イラストには、榮島くんの亡くなった友達がモデルの子どもたちが活動を支える様子も描かれています。

最後には「たくさんの人に病気のことを伝えるために。たくさんの人が病気の子どもたちのことを考えてくれるように。たくさんの人の思いが、早く元気になりたいと願う子どもたちに届くように」と榮島くんの思いがつづられています。

絵本は来年6月に3000部が出版される予定です。

小児がん 現状と課題

小児がんは年間2500人前後が発症すると言われ、子どもが亡くなる病気では最も多くなっています。がんの種類が多い一方、治療経験が豊富な医師が十分でなく、支援体制が整っていないことが長年、問題になっています。
また治療を受けた子どもの中には、抗がん剤や放射線などの影響で、成長の遅れや体の機能の低下に苦しんでいる子もいます。

国が全国の15の病院を「小児がん拠点病院」に指定し、本格的な対策が始まったのはわずか4年前です。大人のがんに比べて対策が遅れていて、治療法や薬の開発、治療後の長期的なケアの態勢の整備などが課題となっています。

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