活用広がるプロジェクションマッピング 医療や技術開発
2017年12月11日10時25分
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 建物や家具などに映像を映し、立体的な映像を楽しむプロジェクションマッピング(PM)。
娯楽に使われるイメージが強いこの技術だが、半導体の材料開発や医療分野などの先端研究にも利用されている。
 名古屋大学未来材料・システム研究所で結晶成長工学を研究する宇治原徹教授らの研究チームは、シリコンカーバイド(SiC)の開発にPMを取り入れている。
SiCは省エネにつながる次世代パワー半導体の素材として高品質化が期待されている。

 高品質化のための実験は、2千度近い高温の炉内で10〜20時間かけて行う。
繊細な作業で、炉内に設置された装置の位置が数ミリずれたり、温度が数度違ったりするだけで、品質が悪くなるという。
 だが、高温の炉内がどうなっているのかは直接確認できない。そこで、人工知能(AI)で炉内の装置の位置から温度分布などを予測させて映像化。
炉内部の装置の動きと同期させたPMを作って炉を覆うカバーに投影している。
 温度の低い部分は青色、高い部分は赤色で表示される。
内部の状態が把握できることで、自動制御されて複雑化した材料開発で、もう一度人間の直感を働かせて実験中にも微調整することができるという。

 表示してみると、想像していなかった温度分布になっていることもある。
宇治原教授は「装置を透視しているような感覚。以前はシミュレーションと実験のずれがあったが、炉の中の様子が見えるだけで、実験中にも微調整ができる」と話す。
鋳造や金属のプレス加工などの装置がある工場でも応用可能だという。


▽ PMで投影した炉内部の様子について説明する宇治原徹教授。赤色は溶液の温度が高い部分
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▽ 実験前の炉内部
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▽ プロジェクションマッピングを使ったシリコンカーバイド結晶作製のイメージ
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