https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171225-00010004-houdouk-int

「諸君、準備万端にしたまえ」

「だから、諸君、準備万端にしたまえ。」

 “So you gotta be ready.“

アメリカのマティス国防長官の言葉である。クリスマス前の22日、アメリカのノース・カロライナ州にある陸軍基地“フォート・ブラッグ”を慰問に訪れた際、兵士達に語ったものだ。

この日のマティス長官の発言の全文は未だ公表されていない。この為、全体のニュアンスは良くわからない。

が、AP通信の報道によれば、この日、マティス長官は、1960年代に書かれた朝鮮戦争に関する書物を読むよう兵士達に薦め、その際、「前回の失敗を学ぶことは、来るべき難題を知ることと同じように重要である。・・・中略・・・だから、諸君、準備万端にしたまえ。」と述べたという。

もちろん、軍がいざと言う時に準備不足では困る。だから、準備を万端に整えよと国防長官が兵士達を叱咤するのは珍しいことではない。

だが、やはり気に留めざるを得ない。

朝鮮半島で「嵐雲が勢いを増している」

報道によれば長官は、朝鮮半島では「嵐雲が勢いを増している」、“Stormclouds are gathering“とも発言したという。

アメリカ軍も明らかに朝鮮半島有事に向け準備を加速させているのである。

ただ、その一方で、マティス長官は我々を安心させてくれる発言もしている。

韓国に駐留している米軍兵士達の家族を避難させる可能性について質問され、「まだその時期ではない」。

この韓国駐留米軍の家族達が国外避難を始めたら先行きは非常に厳しい。しかし、まだ、そのような段階には至っていないという認識がマティス長官から明確に示されたことは大きな安心材料である。

平昌五輪中の衝突の可能性は否定

また、2018年2月の平昌五輪を北朝鮮が攻撃する恐れがあるかどうかについて見解を訊かれ、「世界中から集まる若人達を殺めて世界全部を敵に回すような愚かな行動を金正恩がとるとは思わない」とも述べている。

当然ながら、アメリカ政府も、この平昌五輪の時期に軍事的選択肢を実行に移す可能性は無いという事になる。

戦争回避には軍事力の裏付けが必要

さらに、マティス長官は“外交努力が実を結び、戦争を避けられるようになるには、強力な軍事力の裏づけが必要である”という持論を改めて展開し、「我が軍の優秀な若き兵士達よ、我々の外交官達が威厳を持って交渉をし、かつ、相手にその発言を信じさせる為には、我々、軍がいざとなれば行動を起こす用意があることをはっきりさせる必要がある」と述べている。

“準備万端にせよ”という発言のココロは、現時点では、ここにあるとみて良さそうである。現時点は…。

折しも国連安保理が新たな制裁強化策を全会一致で決めたばかりである。アメリカが主導する圧力の最大化に、中国やロシアも協力を強めている証でもある。

しかし、北朝鮮は決議を「戦争行為」と批判した上で、「米本土に核の脅威を加えられる戦略国家に浮上した我が国の実体を忘れてはならない」と威嚇を止めていない。

国際社会の制裁強化とアメリカの軍事的圧力が、手遅れになる前に、夜郎自大を改めさせることを願うばかりである。