http://www.sankei.com/smp/politics/news/180119/plt1801190050-s1.html

 外務省の秋葉剛男事務次官が19日就任し、新体制がスタートした。若くして将来の次官候補と目され、日米同盟重視と厳しい対中観で共鳴する安倍晋三首相の信任も厚い。日中関係改善の兆しが見える中で秋葉氏の手腕が問われている。

 「今の中国を10年前、われわれは予測していただろうか。10年後、20年後の日本のために働かなければならない」

 秋葉氏は19日に外務省で行われた次官交代式で軍事・経済両面で大国化した中国についてこう述べ、省員らに長期的な展望の重要性を訴えた。

 秋葉氏は昭和57年に入省し、総合外交政策局長や政務担当の外務審議官を歴任。平成18年には省内幹部の強硬な反対を受けながらも、中国語専門の「チャイナ・スクール」以外では異例の中国課長に就任した。

 強みは、強硬な交渉も辞さない手腕と国際法や安全保障に関する豊かな知識だ。中国課長時代は東シナ海ガス田開発をめぐり中国側に一歩も譲らず、20年6月の日中合意につなげた。首相が18年に訪中した際は「戦略的互恵的パートナーシップ」の名称を考案し、前の小泉純一郎政権で冷え込んだ日中関係の立て直しに努めた。

 安易な妥協や方針転換も嫌う。民主党政権では米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設を見直そうとした民主党議員と対立。「秋葉だけは遠い国の大使館に飛ばす」と言われたこともあった。

 歴史認識や安保での対中強硬路線は首相、河野太郎外相と共通する。政権内では経済成長を続ける中国との協力強化は欠かせないとの声が根強く、「安倍−河野−秋葉」ラインが強硬であればあるほど大胆な取引にも世論の理解が得やすいとの見方がある。

 一方、今月中旬に中国海軍の潜水艦が尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺の接続水域を潜没航行するなど、中国の軍事的な挑発行為は続く。秋葉氏は交代式の最後に「感情によって外交はゆがむ。静かな声でしっかりと会話して政策を作っていってほしい」と述べたが、秋葉氏自身に向けた言葉でもある。