◆NYの摩天楼に変化の兆し、「スレンダー」な高層ビルが続々登場

エンパイアステートビルにアールデコ様式のクライスラービル、超高層のワン・ワールド・トレードセンター。
米ニューヨークには世界でも有数の象徴的な高層ビルが立ち並ぶ。

だが現在、同市の有名なスカイラインに加わるビルに異変が起きている。
ビルが細くなってきているのだ。

一例として挙げられるのはマンハッタンのミッドタウンに建設中の「111W57」だ。
2019年の完成時には高さ435メートルとなる。
セントラルパークを一望する眺めを提供するだけでなく、幅と高さの比率が1:24と世界で最もスレンダーな高層ビルになる見通しだ。

一方、ロシアでも都心に同国初となる「スレンダーな」超高層ビルの建設が進んでいる。
モスクワに拠点を置く建築事務所メガノムが手がける「空中の棚」は、高さ308メートルに達する見込みで、スレンダー比率は1:20となる。

■スレンダーな高層ビルとは何か

高層ビルの場合、建物の「スレンダー度」は見る人の目には分からない。
この分野では、スレンダーという言葉は専門的な技術用語だ。

建築史家のキャロル・ウィリス氏によると、この言葉をビルに適用できるかどうかは、構造物の基礎の幅と高さの比率によって決まる。
構造エンジニアは一般に、最小で1:10や1:12の比率を「スレンダー」と見なしているという。

ウィリス氏は、「ニューヨークのスレンダーなビルは高層建築史の展開として独自のものだ。
単に高いビルとは違う」と指摘。また、ビルのスレンダー比率の決定については、厳密な計算に基づいていないことも多いとして注意を促した。

写真:ニューヨークの「111W57」。2019年のオープン時には世界で最もスレンダーな高層ビルになる見通しだ
https://www.cnn.co.jp/storage/2018/02/20/88033913c4dee414f7a054bb1a8c5e39/slender-skyscrapers-new-york.jpg

■なぜスリム化するのか
ウィリス氏によれば、スレンダーさを打ち出す技術・開発上の戦略が初めて登場したのは2007年ごろ。
ニューヨークに最初に現れた「スレンダー建築」として、高級コンドミニアムの「ワンマディソンパーク」と「スカイハウス」を挙げる。

背景にあったのは、ニューヨークの複雑な区画法だという。
同市ではこうした規制により、一定区域内で建物を建てられる土地面積を制限しているが、そこには抜け穴があり、「空中権」をひとつの区画から別の区画へと移転させることができる。

このため開発業者はまず小さな土地を買い、続けて隣接する区画の空中権を購入。
これらを積み上げることで、高層タワー建設の許可を取得することが可能になる。
細い高層ビルの増加にあたっては、技術面の進展も寄与した。

ニューヨークの不動産コンサルタント企業ミラー・サミュエルの最高経営責任者(CEO)、ジョナサン・ミラー氏は、「素材や技術の進歩により、この10年で『超高層』ビル、特に占有面積が従来より小さいビルを建設することが可能になった」と話す。
こうした「超高層」の分類には、高さ300〜600メートルのタワーが入る。

■周囲の建物から目立つ

開発業者は通常、投資に対するリターンを第一に求めるが、それと同時に、市場の注目を集めるような独自の構造物を作りたいとの考えもある。
スレンダーな設計はこの基準に当てはまる。

写真:スレンダー比率1:12の「ワンマディソン」
https://www.cnn.co.jp/storage/2018/02/20/277b4712ce4ca8a6c8538c5e5d38b750/new-york-slender-skyscrapers-one-madison.jpg

CNN 2018.03.24 13:23
https://www.cnn.co.jp/fringe/35114985.html
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※続きます