https://www.cnn.co.jp/m/business/35116905.html

2018.03.30 Fri posted at 17:23 JST
ニューヨーク(CNNMoney) 米電気自動車メーカー、テスラが公約達成に苦しんでいる。初の大衆向け車種「モデル3」の生産力増強が進まず、資金繰りに窮する可能性もある。

モデル3は3万5000ドルから購入可能で、多くの受注が舞い込んだ。だが生産目標を達成できず、資金を消化する状況が続いている。今年11月には2億3000万ドル(約245億円)、来年3月には9億2000万ドル(約980億円)と合計10億ドル以上の返済期限も迫る。

米格付け大手ムーディーズは27日、テスラの社債をジャンク等級にまで格下げした。スタンダード・アンド・プアーズも格下げの可能性を警告している。

ブルームバーグは米国家運輸安全委員会(NTSB)の自動車識別番号の発行状況から生産状況を追跡している。これによると、生産量は1週間に1026台と昨年10〜12月期からは大きく改善しているものの、今年3月末の目標である2500台には程遠い。

ムーディーズのアナリスト、ブルース・クラーク氏は、どれだけ生産台数を目標に近づけられるかが会社の信用力に関わってくると指摘する。

テスラは当初、昨年末までに毎週5000台のモデル3を生産すると約束。だが昨年7〜9月期に納入したのは222台、10〜12月期は1542台の状況で、目標達成時期を今年6月末に延期した。

自動車産業の主力プレーヤーとなってから、同社は年単位での利益を達成していない。だが、最高経営責任者(CEO)、イーロン・マスク氏のカリスマ性を信じる投資家、債権者、顧客は既存の大手メーカーの牙城に挑戦する同氏を資金的に後押ししている。

同社の株式を買う人々が、同社の市場価値をフォードやGMといった大手メーカーに近い数値へと押し上げている。1000ドルの預託金を支払って新車を予約する顧客は、同社に10億ドル近い資金を提供した。同社が必要とすれば、社債発行でさらなる資金調達も可能だ。

前述のクラーク氏は、テスラがすぐに資金繰りに困ることはないと言及。ただ、モデル3の生産力増強が進まなければ状況が悪化し、再び金融市場に戻ってくる必要が出てくるとの見方を示す。その際には資金調達のコストも上がるとも予想される。

部品のサプライヤー(供給業者)との間でも問題が生じる可能性がある。テスラは昨年末に24億ドルの支払い債務を負っている。長期的な関係の中では大きな金額ではないものの、米ヘッジファンド、ビラス・キャピタル・マネジメントのジョン・トンプソンCEOは、格下げによりサプライヤーが納入時の支払いを要求する可能性を指摘する。

トンプソン氏は米トイザらスの倒産はサプライヤーが同社との関係を切ったからだと指摘。「経験則から、株主、債権者、顧客が利他的であっても、サプライヤーは冷徹でしっかり計算をする」との見解を示す。

同氏は今週、自身の顧客に向けたメールで、テスラが資金繰りに窮し今年後半には倒産へと進む可能性もあるとの予測を示した。同氏のファンドはテスラの株価が急落すると見て、最大級のショートポジション(空売り)を保持している。

格下げやトンプソン氏のコメントについて、テスラ社広報からのコメントは得られていない。