明大、日大などお茶の水周辺の学生らの胃袋を満たしてきた飲食店「いもや」(千代田区神田神保町)が31日、昭和34年の開店以来約60年の歴史を閉じることになり、最後の味を楽しもうと店頭には長蛇の列が続いている。

 今回閉店するいもやは、白山通りに面した神田神保町の「天丼 いもや」と「とんかつ いもや」。いずれも創業者の故宮田三朗氏が立ち上げた直営店で、特に「天丼 いもや」は最初に開いた店にあたる。

 天丼はエビ、イカ、カボチャなどカラッと揚がった5点の天ぷらが載って650円、エビが多めに載ったえび天丼が850円。飾り気のない店内に清潔な白木のカウンターが置かれている。

 すごいのは「ご飯多め」「少なめで」「エビ1本追加して」「イカはいらない」といった細かい注文を伝票を使わずに受けて、間違いなく提供することだ。

 同店の元従業員で、現在は同区東神田で「とんかつ いもや」を経営する樋口好雄氏(69)によると「それは集中力を持ってやれと、宮田さんが教え込んでくれたから」と説明する。

 「気持ちが入っていないと失敗する。でも宮田さんは気持ちよく働かせるのがうまかった。その気にさせるんだ。偉かったね」という。

 「みんな競って働いた。長い時間働く体力もつけてくれた」。だから今でも働けていると感謝しているそうだ。仕事を離れれば父親同然の温かい人柄だったという。

 いもやは10年働くとのれん分けができる。独立しても加盟料などは必要ない代わりに「いもやカラー」を守るという大事な使命がある。

 「昔かたぎだけど、お客さんの要求には応えない、食べる姿勢も注意する。その代わりいいものを提供する。これがいもやカラーです」

 樋口氏によると、最盛期には7店あった直営店がすべて閉店することになり、都内では樋口氏の店と神田神保町1丁目の「天ぷら いもや」が宮田氏の教えを継承していく。

http://www.sankei.com/images/news/180331/lif1803310027-p1.jpg
http://www.sankei.com/images/news/180331/lif1803310027-p2.jpg
http://www.sankei.com/smp/life/news/180331/lif1803310027-s1.html