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4月14日 12時33分
今回のアメリカなどによるシリアへの軍事攻撃、決断への背景にはどのような事情があるのでしょうか。またシリア情勢、中東情勢にどう影響するのでしょうか。

なぜこのタイミングで

アメリカのマティス国防長官はアサド政権による化学兵器の使用について「確信している」と述べました。アメリカはシリアが科学兵器禁止条約に違反し、いわゆる「レッドライン」を超えたと判断したとみられます。

またトランプ大統領としては秋の中間選挙を控え、国内向けに、強い指導者という姿を示したい狙いもあるかもしれません。前のオバマ大統領は、2013年、アサド政権に化学兵器を使った疑いが浮上した際、最終的に軍事攻撃をためらい、弱腰だという批判を浴びました。軍事攻撃もいとわない姿勢をとることでオバマとの「違い」や「決断力」を内外に示す狙いもあるとみられます。

さらに史上初の首脳会談が調整されている北朝鮮に対する警告の意味合いもあるかもしれません。アメリカは必要であれば軍事攻撃も辞さないといった断固たる姿勢を示すことが、非核化を目指す姿勢に偽りがあることは許さないという警告となるからです。

今回の攻撃の規模は

国防総省は日本時間の午前11時から行った記者会見で、ダマスカス近郊など3か所の化学兵器関連施設を狙ったと説明しました。すでに作戦は終了したとしていて、限定的な作戦だったと見られます。

アメリカは、大規模攻撃でシリア、そしてアサド政権の後ろ盾のロシアと正面から衝突することを望んでいません。トランプ政権は化学兵器関連施設を破壊することで、今後の使用を食い止める狙いだと説明しています。

今回の攻撃についてマティス国防長官は去年4月の「倍の規模だ」と述べていますが、限定的なことに変わりはなさそうです。攻撃は、懲罰的な意味合いが強いとみられます。

シリア・中東情勢への影響は

攻撃が限定的なものにとどまったとすれば、これによって全面的な衝突に発展することはないとみられます。

シリアでは内戦そのものは、アサド政権側が圧倒的に有利な状況で今回の軍事攻撃によって、その戦況を覆すものにはなりません。また、トランプ大統領も、シリアの内戦に深入りすることを望んでいません。

現地には今も2000人のアメリカ軍が展開していますが、先日もトランプ大統領が「近くシリアから出て行く」と発言し波紋を呼びました。なるべく早期に撤退しアメリカの負担を減らしたい、というのが本音のようです。

ただ、今回の攻撃によってアサド政権の後ろ盾となっているロシアが反発を強めることは必至で、中東を舞台にした米ロの対立がさらに深まる可能性は否定できません。