5/27(日) 11:40配信
京都新聞

 放置された犬のふんを黄色のチョークで囲み、飼い主に警告する−。京都府宇治市は住民に呼び掛け、「イエローチョーク作戦」に2年前から取り組んでいる。低コストで手軽に始められ、確かな効果も実感。ふん害に憤慨する他の自治体からも注目され、導入する動きが広がる。イエローチョークによって、お茶や寺社だけではない新たな「宇治」像も描かれ始めている。

 15日朝、宇治市の莵道車田連合町内会の役員6人が、地域の美化活動に励んだ。宇治川支流の堤防沿いで花壇を整備し、犬のふんを見回る。この日は草むらから三つ見つかり、近くの路面に黄色のチョークで矢印と日時を記した。道路に落ちている場合は円で囲む。ふんは原則回収せず、後で現場に戻って有無を再確認している。

 町内会の北昌平会長(80)は「簡単に誰でもできるのがいい。自分たちの地域なのだから、自らの手できれいにしないと」。ふんの減少を感じており、いつでも取り組めるようチョークの置き場所も整えた。

 「誰かが見ていると示すことで、飼い主もふんを始末するようになる。ふんが減ってきれいになれば、また汚そうとはしない」。そう指摘するのは、イエローチョーク作戦を考案した市環境企画課の柴田浩久主査(51)だ。市内では飼い犬の登録数が年々増え、ふんの苦情も絶えなかった。イエローカードをふん近くに置いたこともあったが、カード自体がごみになる。費用や手間も掛かって、やがて下火になった。

 そこで駐車違反の取り締まりを参考に2016年に始め、町内会や個人向けに実演で方法を伝えている。苦情の多かった市内の約30地域で、昨年1月に計約130個確認されたふんが年末には1割ほどに減った。

 新聞やテレビなどで活動を知った全国の自治体などから、これまで80件を超す問い合わせや視察があり、導入事例も増えた。東京都小平市は一部地域で効果を確認し、今月から全市域で始めた。静岡県富士市や福岡県久留米市も住民にチョークを配っている。「低予算で解決に導き、他の自治体も参考にしやすい」とは、実証実験を行った名古屋市の担当者。「宇治と言えば歴史や伝統のイメージが強かったが、先進的な取り組みに印象が大きく変わった」(大阪府島本町)との声も出ている。

 行政主導ではなく、個人で始める人も。愛知県一宮市立奥中学の岡本達幸校長は、正門前の犬ふんに長らく悩まされてきた。昨年末に作戦を知り、「これだと思った」。幸い、学校なので古いチョークはたくさんある。「残念!」「困っています」などと、思いも書き添えた。一進一退の状況が続いたが、今春ついにゼロに。「こつこつ努力することは、本校の教育目標にも合致します」

 取り組みの広がりに、宇治市の柴田主査は実感を込めて言う。「住民主体の取り組みが宇治から発信され、共感してくれる人がここまで増えるのは想定外。どんどんまねしてもらえればありがたい」

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印を付ける住民。ふんが見つかればチョークで近くの路面に日時を書き込む(宇治市莵道)

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ふんを見つけた日時を書いた印

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180527-00000008-kyt-l26