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「所有者不明土地」利用可能新法 成立
2018年6月6日 23時03分

土地の所有者がわからないまま放置されている「所有者不明土地」を、公園やイベントなど公共性の高い事業であれば所有者が見つからなくてもNPOなどが、10年間利用できるようにする新たな法律が、6日の参議院本会議で成立しました。

「所有者不明土地」は、人口減少や高齢化に伴い年々増加していて、その広がりは、民間の研究会の推計で、すでに全国で九州の面積を超えているとされています。

今の法律では、こうした土地であっても自治体などが買収するには、所有者全員の了解が必要なため、公共事業がストップしたり、荒れた土地が増えるなどの問題が各地で起きています。

6日参議院本会議で成立した新たな法律は、所有者不明土地を条件付きで所有者が見つからなくても利用できるようにすることが目的です。

具体的には、NPOや企業などが地域の公園やイベントなど公共性の高い事業であれば、都道府県知事の認可の下、こうした土地を10年間利用できるようにするとしています。

その場合所有者が見つかることを想定し、法務局に供託金を預ける仕組みを設けます。

もし期間中に所有者が見つからなければ、継続して利用することも可能です。

このほか新たな法律には、自治体などが所有者を見つけやすくするため同じ役所の中でも、これまで個人情報保護のため認められなかった固定資産税の納税者情報を利用できるようにすることも盛り込まれています。この法律は、来年夏までに施行されます。
抜本的対策も必要
新たな法律について、専門家の中では、これまで手がつけられなかった所有者不明土地の利用が、一定程度進むと評価する意見がある一方、さらなる抜本的な対策が必要だと指摘する意見もあります。

民間の研究会は、このまま対策が進まなければ2040年には、その面積が今より1.75倍の720万ヘクタールに広がり、経済的な損失も年間3100億円まで膨らむと試算しています。

政府は相続の際の登記の義務化や、所有者が見つからない場合、所有権が放棄されたと見なし、活用可能とする制度改正を検討していますが、憲法が保障する個人の「財産権」を侵害するおそれもあり、慎重な検討を求める意見もあります。

「所有者不明土地」の問題に詳しい早稲田大学の山野目章夫教授は、「今までこの問題に正面から向き合う法律がなにもなかったので、そういう意味では、第一歩といっていいのではないか。一方、所有者不明土地を解消し、新たに生じないようにする抜本的な対策については、今回の法律では本格的な対処が用意されておらず、さらなる検討が必要だ」と話しています。