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拉致被害者家族 米朝会談を注視「これを逃せば永遠に帰らぬ」
2018年6月12日 11時43分

12日に開かれる史上初の米朝首脳会談について、北朝鮮に拉致された被害者の家族は肉親の帰国に向けたアメリカ側の後押しに強い期待を寄せるとともに、キム・ジョンウン(金正恩)委員長が拉致問題でどのような反応を見せるのか、会談の推移を見守ることにしています。

北朝鮮による拉致問題は去年、事件発生から40年がすぎましたが、展望は開けないままで、高齢化が進む被害者の家族は「残された時間は少ない」として、ことし中のすべての被害者の帰国を訴えています。

家族が特に注目してきたのが史上初の米朝首脳会談で、会談に臨むトランプ大統領が拉致被害者の帰国に向け最大限支援する考えを示していることから、アメリカ側の後押しに強い期待を寄せています。

11日、記者会見した家族は「この機会を逃したら永遠に被害者が帰って来られないという覚悟です」と話し、キム・ジョンウン委員長に決断を求めました。

ただ「拉致問題は解決済み」としてきた北朝鮮の出方は見通せず、不十分なまま幕引きが図られることへの警戒感もつきまとっていて、家族はトランプ大統領が拉致問題にどこまで強く言及するのか、キム委員長がどのような反応を見せるのか、会談の推移を見守ることにしています。

「トランプ大統領が迫れば突破口開ける」

トランプ大統領は去年9月の国連総会の演説で横田めぐみさんに言及し、北朝鮮を非難するとともに、11月の来日の際には被害者家族と面会し、記者会見で「被害者を帰せば特別な始まりとなる」とキム・ジョンウン委員長に呼びかけました。

家族は、北朝鮮が強く意識するトランプ大統領が、会談の中で被害者の帰国を直接迫れば、突破口が開ける可能性もあるとみています。

このため、先月にはアメリカを訪問し政府要人と面会を重ねるとともに、大統領に宛てた肉親の帰国を願う手書きのメッセージを託し「会談の中で示して帰国を迫ってほしい」と要請しました。

北朝鮮の出方が依然、見通せない中、家族からは日米両政府の取り組みとキム委員長の決断を求める声が一段と強まっています。

時間との闘い 高齢化進む家族たち

拉致被害者の家族は解決まで残された時間が多くないという切実な事情を抱えています。

政府が認定している拉致被害者のうち安否がわかっていない12人の親で、子どもとの再会を果たせずに亡くなった人は、平成14年の日朝首脳会談以降だけでも6人に上っています。

去年は増元るみ子さんの母親の信子さんが90歳で死去し、一緒に拉致された母親の消息がわかっていない曽我ひとみさんの夫、ジェンキンスさんも亡くなりました。

健在な親は横田めぐみさんと有本恵子さんの両親の4人となっていますが、めぐみさんの父親で活動の先頭に立ってきた滋さん(85)が体調を崩してことし4月から入院を余儀なくされるなど、全員が老いという現実に直面していて、解決は時間との闘いの局面に入っています。

一部は帰国も北朝鮮の説明に矛盾

政府が北朝鮮による拉致被害者と認定している17人は、昭和52年から58年までの7年間に相次いで拉致されました。

平成14年の日朝首脳会談でキム・ジョンイル(金正日)総書記が初めて拉致を認め、5人が帰国を果たしました。

このほかの12人の被害者について北朝鮮は、「死亡」または「入国していない」と主張していますが、「横田めぐみさんのものだ」として出してきた遺骨から別人のDNAが検出されるなど、その説明には矛盾や誤りがありました。

政府は、北朝鮮の説明は信ぴょう性が疑われ受け入れることはできないとして、調査のやり直しとすべての被害者の早期帰国を求めています。

また、17人以外にも「北朝鮮に拉致されたのではないか」という家族などからの届け出を受けて警察や民間の団体が調査している行方不明者が800人以上います。