2018年6月21日8時56分 朝日新聞デジタル
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 ハンガリー国会は20日、不法移民への支援を禁止し、違反した個人や団体に刑事罰を科すようにする法案を可決した。難民申請の法的支援などの人権保護活動もできなくなるため、人権団体は強く反発している。移民を敵視する同国内の空気を反映した動きといえ、波紋を呼びそうだ。

 ハンガリー通信によると、国会(一院制、定数199)は賛成160、反対18の大差で法案を可決した。不法移民を金銭的に支援するなどした場合、1年以下の禁錮刑となるほか、外国人が密入国を支援した場合は追放処分とする。

 新法は通称「ストップ・ソロス法」と呼ばれる。オルバン首相率いる与党の中道右派「フィデス・ハンガリー市民連盟」は、ハンガリーの民主派を支援し、難民申請の援助も手がけてきた同国出身の米投資家ジョージ・ソロス氏を敵視。4月の総選挙では「国を壊し、多くの移民を入れようとしている」とのソロス氏批判を繰り広げて圧勝し、5月に法案を提出した。

 ソロス氏が出資する人権団体「オープン・ソサエティー財団」は総選挙後、圧力を受けたとしてハンガリーの事務所を閉鎖。新法はソロス氏とつながりのあるNGO「ハンガリー・ヘルシンキ委員会」や、アムネスティ・インターナショナルなどの人権保護団体も対象になるとされる。

 ヘルシンキ委員会は、法案について「人権を守ろうとする者に対する武器として罰則を使うことを提案している」と批判。「共産主義の独裁以来の恐怖を与えている」とする声明を発表していた。

 政府はすでに、ソロス氏とつながりのある団体が移民流入を推進しているとして、特別に課税する法案も国会に提出している。(ウィーン=吉武祐)