毎日新聞 2018年8月20日 12時58分(最終更新 8月20日 16時05分)

沖縄科学技術大学院大(沖縄県恩納村)は、海岸線に打ち寄せる波のエネルギーを電力に変換する波力発電の実証実験を、インド洋の島しょ国モルディブとともに始めた。同国では地球温暖化に伴う海面上昇で国土の水没が懸念される一方、発電はそのほとんどを温暖化の一因である化石燃料に頼っている。研究チームは「気候変動の象徴ともいえる国で未来のエネルギーを実用化したい」と意気込んでいる。

 波力発電は、海岸近くの浅い海域で砕けた波のエネルギーを利用する。加速器の分野で国際的な業績のある同大の新竹積(つもる)教授(物理学)が2013年から発電機の開発に取り組み、波でタービンを回す直径35センチの小型試作機を完成させた。今年5月にはモルディブのカンドゥーマ島の沖合約70メートルに2台を設置。1台あたりの発電量はピーク時で1キロワット、平均で100ワットとごく少ないものの、順調に稼働しているという。

 今年11月に直径60センチの試作機で、来夏には波を集める囲いを付けた実機で実験を始める予定。実機では平均で10キロワットの発電を見込めるという。波力発電は、波のエネルギーが安定している半面、大型化するとコストがかさみ、実用化されていなかった。新竹教授は「今回は、小型でシンプルな構造の発電機を多く並べることでコストを下げたい。赤道直下で、ハリケーンや台風が来ないモルディブは実証実験に最適だ。将来は実用化して首都マレに送電したい」と話している。【須田桃子】

https://mainichi.jp/articles/20180820/k00/00e/040/244000c