>>417
大麻の取扱いは果たして刑事罰で取締るべきものなのか。
大麻取締法は、懲役刑という刑事罰でもって大麻の利用を禁止している。大麻の取扱をなぜ禁止しているのか、つまり大麻取締法の目的について同法は何ら規定を置いていない。
まず、このように目的規定のない法律はそもそもその存在理由が不明確であるから、民主主義社会においては無効とされるべきであろう。
厚生省や警察等取締り当局や裁判所は、大麻取締法の目的として、大麻の使用による国民の保健衛生上の危害の防止であると説明している。
しかしながら、「国民の保健衛生上の危害の防止」という抽象的な疑念を刑事罰の目的つまり法律で保護される利益(法律学上は保護法益といわれる)とすること自体が、
人権尊重を基本理念とする近代的法体系にはなじまないものである。
刑事罰、特に懲役刑は、人の意に反して身体の自由を束縛し、労働を強制するのであるから、それを課される者にとっては、人権侵害そのものであるので、刑事罰の適用は必要最小限にするべきが基本である。
大麻の使用が、どのような保健衛生上の危害を生じるのかについて、過去の裁判所の判例は、大麻には向精神作用があり、精神異常や幻覚が生じるとしているが、そこでいう精神異常や幻覚の内容については、
例えば時間感覚がゆったりする、味覚・聴覚・視覚などの感覚が敏感になる(つまりよくなる)ということであって、
これらは刑事罰でもって取締らなければならない反社会的な犯罪行為とはまったく云えないものである。
向精神作用自体が危険であり、犯罪であるとすれば、アルコールの有する向精神作用(いわゆる酔いの作用)は大麻と比べ格段に強いものであり、アルコールを大麻以上に厳しく取締らなければならなくなる。
また、そもそも人間は自らの体内で向精神作用を有する神経伝達物質を生産するのであり、
例えば何かに集中したり、恋愛中であったり、また、大麻取締法違反等刑事事件で逮捕されたりしてショックを受けるとアドレナリンやドーパミン等いわゆる脳内麻薬と呼ばれる神経伝達物質を生産するのである。
逮捕されること自体が神経伝達物質を生じさせるのであるから、大麻取締法そのものが、保健衛生上有害ともいえるのであって大麻取締法自体を取締りの対象にしければならなくなってしまうのである。