https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-45506533

菌類にまつわる10の秘密、最新研究で明らかに
2018年09月13日

ヘレン・ブリッグス、BBCニュース

それは、どこにでもある。土の中にも、私たちの体の中にも、空気にも。しかし大抵は、小さすぎて肉眼で見ることはできない。

菌類は薬にもなるし食物にもなる。また病気を引き起こして植物や動物に大きな被害をもたらすこともある。

菌界を大規模に評価した初めての報告書「State of the World's Fungi(世界の菌類の様子)」によると、菌界は地球生命にとって欠かせない存在だ。

しかし、世界にざっと380万種類あるとされる菌類の90%以上が、今のところ科学で解明されていない。

「菌類は非常に興味深い生物ですが、本当にほとんどが分かっていません」と話すのは、報告書を作成した英キュー王立植物園理事会で科学部門長を務めるキャシー・ウィリス教授だ。

「最も奇妙なライフサイクルを持つ本当におかしな有機体です。それでいて、地球の生態系での菌類の役割を理解すると、菌類が地球の生命を下支えしているのが分かります」

多くの人は、食用きのこや、ペニシリンを作り出すカビについてはよく知っている。しかし菌類は、極めて重要な役割をさまざまに担っている。植物が水や栄養素を土壌から吸い上げる手伝いから、血中コレステロールを下げたり臓器移植を可能にしたりする薬にまで至る。

また、菌類によるプラスチックの分解や新しいバイオ燃料の生成でも期待されている。しかし、ダークな一面もある。木や農作物などの植物を世界中で荒廃させたり、両生類などの動物を絶滅させたりするのだ。

ジキル博士とハイド

エスター・ガヤ博士は、キュー王立植物園理事会で菌類の世界の多様性と進化を研究する調査プロジェクトを率いている。博士は、菌類が少しジキル博士とハイドに似ていると話す。
「菌類は同時に良くも悪くもなれる」とガヤ博士は語る。「同じ菌類が、有害で悪いものと見られることもあるし、また多くの可能性と解決能力を秘めている場合もあります」。

この報告書は、食料安全保障への答えとなりえる有機体の一群に関する知識のうち、これまで解明されていなかった部分に光を当てている。農作物の病原体で最も破壊力のあるもののいくつかも菌類だ。しかし一方で栄養素の再利用もすれば、二酸化炭素の排出を抑える役割も担う。

「我々は菌類を無視しているが、それは危険」とウィリス教授は話す。「もっと真剣に取り組まなければいけない分野です。気候変動など、さまざまな課題に直面している今は特に」。

菌類の驚くべき事実

⒈菌類は菌界として独自に分類されているが、植物より動物に近い
⒉菌類の細胞壁にはロブスターやカニと同じ化学物質が含まれている
⒊ある菌類は、たった数週間でプラスチックを分解できることがわかっている
⒋菌類の一種のイースト菌は9000年も昔から蜂蜜酒を作るのに使われていたと思われる証拠がある
⒌少なくとも350種が食品として消費されており、中には1個当たり数千ドルもするトリュフや、肉の代替品クオーン、そしてマーマイトやチーズに入っているものもある
⒍車のプラスチック部品や合成ゴム、おもちゃのレゴは、菌類に由来するイタコン酸から作られる
⒎216種の菌類に幻覚作用があるとされている
⒏農産廃棄物をバイオエタノールに変換するのに菌類が使われる
⒐菌類から作った製品が発泡スチロール、皮、建築素材の代替品になる
⒑DNAの研究によると、1つの土壌サンプルには数千種類の菌類が存在する。しかしその多くは解明されておらず、人目にも触れないいわゆる「闇の分類群」
(リンク先に続きあり)

https://ichef.bbci.co.uk/news/410/cpsprodpb/4CA2/production/_103381691_phallusindusiatusvent.-img_3356_tai-huili.jpg