日本主張「農産物はTPP水準」 米は尊重
毎日新聞2018年9月27日 21時51分(最終更新 9月28日 01時07分)
https://mainichi.jp/articles/20180928/k00/00m/020/134000c

日米、関税交渉へ 車発動は当面回避
 【ニューヨーク中井正裕、清水憲司】日米両政府は26日(日本時間27日未明)、ニューヨークで開いた首脳会談で、農産物や工業品の関税を相互に引き下げる「日米物品貿易協定(TAG)」の締結に向けて、2国間交渉に入ることで合意した。両首脳は、米国が検討する自動車・同部品の輸入制限について「交渉中は発動しない」ことを確認。また、日本の農林水産品関税引き下げについて、米側は「環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の水準が最大限」とする日本側の主張を尊重する意向を示した。

 TAGは日米相互にモノの関税の撤廃・引き下げを行う協定。日本とオーストラリアやメキシコなど11カ国によるTPPや日本と欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)のように、投資ルールやサービス分野を含めた包括的な自由貿易協定(FTA)とは異なる。日本が関税協定に絞った通商交渉を行うのは異例だ。交渉開始は年明けになる見通し。両国は関税交渉の終了後に投資ルールやサービス分野の交渉も行う方針で、将来的に米側が求めてきた「日米FTA」に発展する可能性がある。

 TAG交渉入りに際して、日本は農林水産品ではTPPの水準を超える関税引き下げなどの市場開放を行わないことを、米国は自動車産業の雇用増加を目指すことをそれぞれ前提とする。約1時間15分にわたった首脳会談後に公表された共同声明は、こうした双方の立場を「尊重する」と明記。安倍晋三首相は会談後の記者会見で「双方の違いを尊重しながら、ウィンウィン(共存共栄)の経済関係を作り上げていくことが必要だ」と強調した。
 日本は、経済に大きな影響を与える米国の自動車輸入制限を回避するため、米国にTPP復帰を求める従来方針を変更し、国内農家の懸念が強い米国との2国間交渉入りに踏み切った。トランプ政権から農産物の市場開放を「TPP以下」に抑える条件を取り付けたとして国内の理解を得たい考えだ。
 一方、トランプ氏は同日、安倍首相とは別の会見で「日本が何年も避けていた貿易協議を受け入れた。とても良いディール(取引)になると確信している」と歓迎。トランプ氏はTPPを「ひどい協定だ」と酷評して離脱しただけに、農産物市場開放などについて「TPP以下」の成果で納得するかは不透明だ。