アメリカのAmazonでは、全ての従業員の最低賃金を時給15ドル(約1700円)以上に引き上げることが決まっています。
これは従来の最低賃金7.25ドル(約830円)からの大幅な引き上げになるのですが、従業員の間からは「月収が減る」という批判の声があがっています。

2018年10月2日、Amazonは2018年11月1日からアメリカ国内の全ての従業員の最低賃金を時給15ドル(約1700円)以上に引き上げることをブログで公表しました。
この変更は25万人以上の従業員と10万人以上の期間労働者に影響があるもので、Amazonでは「全ての従業員の収入が増加してその家族にも恩恵がある」としています。

この変更について、ジェフ・ベゾスCEOは「我々は批判の声に耳を傾け、何をやりたかったのかを考え抜いた結果、先頭に立って賃金改革を行うことに決めた」と述べています。
また、Amazon Global Corporate Affairsの上級副社長ジェイ・カーニー氏は「我々は、国内の従業員とその家族を含む何千万人の人の生活に良い影響を与える最低賃金の引き上げを支持します」と述べています。

単純に考えれば「時給が上がるなら素晴らしいではないか」と思う今回の変更ですが、実は手放しでは喜べない状況が存在していることが明らかになってきています。
従業員が明らかにしたところによると、今回の変更では最低賃金の引き上げが行われるのと同時に、これまで実績に応じて支払われてきた月間ボーナスや、定期的にAmazonの株を受け取ることができていたストックオプション制度などが廃止される事になっており、時給は上がっても月収や年収レベルで考えると実質の収入減になることが判明しているとのこと。

これまでAmazonのフルフィルメント・センターでは、作業者の出勤状況や生産性目標のクリア状況に応じて通常期では8%、11月と12月の繁忙期では16%のボーナスが支払われてきました。
たとえば月収が20万円の従業員だと1万6000円もしくは3万2000円のボーナスが支給されてきたわけですが、2018年11月以降はこれらが全てカットされることになります。

また、従来はAmazonに雇用された時点で従業員は額面約2000ドル(約23万円)のAmazonの株を2株支給されてきました。
さらに、1年に1度新たに1株が支給されるという制度がありましたが、これらの制度も廃止されることに。
その後は、従業員に対して株を直接販売するプログラムが提供されるようになるとのこと。

Amazonの従業員はThe Vergeに対し、「このニュースは、月々のボーナスや株の支給でインセンティブを受け取っていたフルフィルメント・センターの従業員にとっては衝撃的なものだ」という意見を述べています。
また、従業員の中からは今回のAmazonの決定について「政治的な行為だ」と述べ、「最低賃金の引き上げ」という耳障りの良いキーワードの裏側には賃金カットが存在し、実質的な人件費削減策であることを批判する見方も寄せられています。

この見方についてAmazonの広報担当者は、「最低賃金引き上げにより、全ての時間労働者はトータル賃金の上昇を受けることになります。
加えて、今後はインセンティブベースの給与体系ではなくなるために、賃金はより即時的で予測しやすい形になるでしょう」とコメントしています。

https://gigazine.net/news/20181004-amazon-eliminate-monthly-bonuse-stock-grant/