世界各国の建設現場を遠隔操作する未来を描く(コマツが公開した遠隔操作建機の運転席)
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コマツが16日、国内最大の家電・IT(情報技術)国際見本市「CEATEC(シーテック)ジャパン2018」に、初めて出展した。初日の基調講演では大橋徹二社長が、自律運転する無人の建機や遠隔操作して動く建機など、「人がいない」未来の建設現場の新たなコンセプトを発表した。

「うーん、面白い。未来がゲームに見えてきたのは私だけでしょうか」。建設現場をデジタル化して生産性や安全性をあげる「スマートコンストラクション」に早くから取り組んできた同社が発表したのは、建機のオペレーターが世界各国の建設現場を、遠隔で操作する近未来のイメージだ。

ニュージーランドの自宅で画面の前に座った青年が、「募集中」の世界各国の建設現場から施工を請け負う。自分のレバーを操作し、遠い国のショベルを動かす。はたから見れば、まるでゲームに興じている人にも見える。コンセプトムービーを見た人が漏らしたのが、冒頭のコメントだ。

同日基調講演でムービーを紹介した大橋徹二社長は「今後は遠隔で施工を請け負う遠隔オペレーターも生まれてくる。建設現場でもワークシェアが広がるだろう」と話した。準備は進めている。

足元で同社は、NTTドコモと、建設機械や鉱山機械の遠隔制御システムの実証実験に取り組んでいる。シーテックの会場内で披露したのは、高速で大容量が特徴の次世代通信「5G」を使って7キロメートル離れた千葉市美浜区の現場のブルドーザーを遠隔操作する実証実験だ。会場内の専用コックピットで運転者が操作すると、画面に見えている建設現場で実際にブルドーザーが動き出す。搭載した4つのカメラで画像を合成し、あたかもブルドーザーを上空から見ているように周りを確認できるのが、前回コンセプトを発表した17年以降の新たな技術だ。同社は同日、人工知能(AI)を使って画像を解析し、自律的に動く無人運転のショベルやクローラダンプに取り組んでいることも発表。美浜区の中継先では、無人のショベルやダンプが協調して土を掘ったり運んだりする姿を披露した。

同社は無人運転を巡っては2008年に世界で初めて鉱山向けのダンプトラックを南米・チリで商用化しており、「今は自動運転のレベルでは周囲を認識して単独行動したり協調したりできるレベル3〜4あたりだが、今後AIを使って自動判断する5まで引き上げたい」(大橋社長)と話す。

同社は業界に先駆けて建設機械の遠隔監視システム「コムトラックス」を稼働するなど業界に先駆けてIoTに取り組んできた。15年にはICT(情報通信技術)建機で土木・建設業界の効率化を目指すサービス「スマートコンストラクション」を始め、すでに約6千件の現場に納入した。

今後は他社とのコラボレーションで革新を生み出すオープンイノベーションに力を入れる。17年からNTTドコモなど複数社と合弁会社を設立し、建機の稼働状況などの情報を集めて活用するオープンプラットフォーム「ランドログ」を使って現場の安全性や生産性の向上を目指している。

今回の初出展には、新たなパートナーと次世代の現場を作るコマツの意気込みが表れている。(西岡杏)

2018/10/16 14:34
日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO36536510W8A011C1X13000/