初詣などに欠かせない「さい銭」。

 最近は、紙幣や硬貨だけでなく、1円単位で支払える電子マネーで受け付ける神社や寺が全国で広がっている。「便利でいい」「御利益ない」。時代の流れに沿った方法には、賛否も分かれている。

 東京都港区の愛宕神社は2014年、さい銭泥棒防止のため、電子マネー「楽天Edy」による決済を開始。権禰宜(ごんねぎ)の松岡里枝さん(52)は「当初は批判もあったが、国がキャッシュレス化を進めることもあり、理解が得られてきた。さい銭はそもそも、米や魚などの奉納が現金に変わったもの。現金が進化した電子マネーでも違いはない」と説明。さい銭が電子決済できるのは仕事始めの日限定で、19年は1月4日に行う予定だ。

 世界文化遺産の日光二荒山神社(栃木県日光市)は18年10月、電子決済が普及する中国からの参拝客増加を理由に、いつでもさい銭を電子決済できるシステムを導入。境内の約10カ所にQRコード付きの看板を掲げ、支払先をスマートフォンで読み込めるようにした。神社総務部長の斎藤芳史さん(66)は「電子決済は時代の流れ。中国の春節(旧正月)に当たる2月には多くの参拝客が来て電子決済が増えるのでは」と期待する。

 京都府福知山市の海眼寺も同月末、寺を普段訪れない若者らを狙って電子決済を導入。芝原三裕住職(38)は「電子マネーも現金同様ありがたい浄財。さい銭が電子決済できる面白さを知ってもらい、若い世代にも寺を身近に感じてもらえれば」と話す。

 インターネット上では「好きな金額を簡単に入れられて便利」「ポイントやマイルがたまる」と好意的な声が上がる。一方で、「電子データ(で支払うこと)に違和感」「罰当たりな気がする」など否定的な意見も目立つ。

 神社本庁(東京都渋谷区)の広報担当者は「御利益はそもそも、お金の対価として与えられるものではない」と強調。「大切なのは祈願成就への感謝の気持ち。御利益があるかどうかは、その人の心持ちの問題です」。

2018年12月30日 18時38分
時事通信社
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