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広域
貝毒深刻、三陸ホタテ危機 水揚げ「史上最悪」の昨年比6割に
2018年12月31日 月曜日

 三陸産の養殖ホタテガイが危機にひんしている。岩手、宮城両県の生産海域は今季、長期にわたって国の基準を超えるまひ性貝毒が検出され、水揚げ量は不漁だった昨年の6割に低迷する。両県は出荷基準の緩和で打開を目指すが、原因不明のへい死が拡大するなど事態の改善には至っていない。

 宮城県産ホタテを生産する唐桑半島東部から女川・牡鹿半島東部の7海域は、4月下旬から10月下旬までほぼ全域で出荷の自主規制が続いた。県漁協によると、今季の水揚げ量は2556トン(11月末時点)。「史上最悪」と言われた昨季の6割程度となる見通しだ。

 岩手県は12海域のうち南部の最大7海域で出荷が自主規制された。このうち釜石湾海域(釜石市)では3月6日から解除されていない。県内の水揚げ量は前年同期比59%の999トン(11月末時点)にとどまる。

 昨年から深刻化している貝のへい死も追い打ちを掛けた。石巻市雄勝町でホタテ養殖を営む男性(69)は「解除を待つ間にどんどん貝が落下してしまった」と嘆く。来季に向け、11月上旬から12月中旬まで半成貝の耳つり作業をしたが、リスク回避のため例年より量を減らしたという。

 宮城県漁協と岩手県漁連は6〜7月、出荷規制基準の緩和を実施。一定の条件の下、貝毒が不検出だった貝柱について各県が認定した工場での加工、出荷を認めた。宮城の場合、4〜9月の水揚げ量約2100トンの大半が基準緩和後の出荷とみられる。

 貝毒の影響は水産加工業界にも及ぶ。貝柱の加工を担う宮城県内の認定工場は22カ所。基準緩和後、各社が一斉に出荷を始めた影響で価格が下落し、多くの加工業者が苦境を強いられた。ヤマナカ(石巻市)の高田慎司代表は「ホヤや輸出用カキの出荷時季と重なり、多忙を極めた」と振り返る。

 ホタテはここ数年、不漁に見舞われ「市場の常識が変わった」(高田代表)と言われる。貝毒が市場をさらに不安定にさせた。

 同社は今年、衛生管理の国際認証「HACCP(ハサップ)」を活かし、県産ホタテを米国や台湾に初めて輸出。海外販路の開拓を進める。高田代表は「貝毒の影響を含め、来季以降が気掛かりだ。他産地の動きを見ながら(戦略を)考えなければ」と話す。

 貝毒は、春から夏に増える有毒なプランクトンが二枚貝の体内に蓄積されて発生する。今季は有毒プランクトンが沖合から大量に流入した可能性が指摘されるが、原因は不明。