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JR東日本が7日、運転士が乗務しない自動運転の導入に向けた走行試験を東京の山手線で行いました。

自動運転の走行試験は、JR東日本が開発を進めているATO=自動列車運転装置を備えた「E235系」の車両を使い、終電後の山手線で行われました。

車両は大崎駅を出発し、1周34.5キロを2周します。

今回の試験では運転士は立ち会いましたが、出発の操作のあとは、運転台のレバーに触れることなく速度の調整や各駅の停車が自動で行われました。

そして、適切な加速や減速ができるかや乗り心地、それにダイヤが遅れた場合に回復できるかなどを確認していました。JR東日本は、今回の走行試験を通して、まず自動運転の技術的な課題を検証することにしています。

JR東日本運輸車両部の得永諭一郎担当部長は「運転士の運転に比べ余分な加速や減速があり、より滑らかな運転を目指す必要がある。走行試験の結果を生かして、なるべく早い段階で自動運転が実用化できるよう取り組んでいきたい」と話していました。

背景に人手不足
JR東日本は将来的な人手不足に備えるため、おととしプロジェクトチームを立ち上げ、運転士が乗務しない自動運転の導入に向けた検討を進めています。

社員の年齢構成を見ると、去年4月の時点で旧国鉄時代に採用された55歳以上が4分の1近くを占めているのに対し、民営化の前後の時期は採用を抑えていたため、45歳から54歳の層が1割程度にとどまっています。

このため、社員の多い年齢層が定年を迎えて退職したあと、近い将来、運転士や車掌などの不足が見込まれています。
安全への課題は
運転士が乗務しない自動運転は、神戸市の「ポートライナー」や、東京の「ゆりかもめ」など、外部の交通と交わらない高架橋やトンネルでの運転を前提に設計された新交通システムですでに導入されています。

しかし、一般の鉄道では、線路に踏切があることや、乗客への対応も必要なことから、自動運転の導入が難しいとされていて、新たに路線すべてでの高架化やホームドアの設置などの対策が必要になります。

JR東日本では、自動運転導入の具体的な時期や路線はまだ決まっていませんが、ほかの路線からの乗り入れがない山手線や、高架化された東北新幹線などでの導入を検討しています。

JR東日本の2027年までの中期経営ビジョンでは、緊急時に備えて車掌などの係員だけが乗車することを想定し、将来的には乗務員を完全に無人化することも検討しているということです。

ただ、これまで人が判断していた車両の異常な音や異臭などをシステムが判断する必要もあり、技術的な課題は多く残されています。

このほか、駅の設備や運行条件のルールの見直しも必要になることから、国土交通省は専門家や鉄道各社でつくる検討会を設置して、法的な課題についても議論を進めています。