1/7(月) 11:53配信
毎日新聞

 精神疾患で入院する生活保護受給者数には都道府県で最大7倍の差があるとする調査結果を、医療経済研究機構などのチームがまとめた。人口当たりの受給者や精神疾患の病床の数が多いほど入院患者が多い傾向があり、専門家は自治体が退院と自立生活を支援する必要性を訴える。

 生活保護受給者の医療費は公費で賄われ、扶助額は年間約1兆8000億円に上る。このうち15%が精神疾患による入院の費用とされるが、各地の精神病床に生活保護受給者がどの程度いるのかは分かっていなかった。

 チームは2016年の診療報酬明細書(レセプト)を使い、同年5月に精神疾患で入院していた生活保護受給の患者を分析した。入院期間は1年未満が32%▽1〜5年未満が25%▽5年以上が43%。1カ月の医療費は平均37万2250円だった。

 人口当たりで見ると、10万人につき36.6人の受給者が精神疾患で入院中で、最多の長崎県(83.3人)と最少の長野県(12人)では約7倍の差があった。1〜5年未満の長期入院に限ると、全国では同9.2人。最多の高知県(20.6人)は最少の岐阜県(2.4人)より約8倍多かった。

 厚生労働省の16年の統計によると、長崎県は人口当たりの精神科病床数が全国2番目に多い。また15年の統計で、高知県は人口当たりの生活保護受給者数が3番目に多い。全体でも、この二つの要素が入院者数に強く影響していたという。

 調査した東京都医学総合研究所の奥村泰之主席研究員(臨床疫学)は「精神疾患患者の自立を促すためにも、自治体が長期入院患者の退院支援を推進するなど、地域間での格差を是正する施策が必要だ」と指摘する。【河内敏康】

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