2019/01/17 01:50
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肺がんの根治が期待される研究成果を発表する矢野教授(左)=金大角間キャンパス

 日本人に多いタイプの、肺がんの細胞をほぼ死滅させることに成功したと、金大がん進展制御研究所/ナノ生命科学研究所の矢野聖二教授らの研究グループが16日発表した。がん細胞の増殖に関わる分子を狙い撃ちする分子標的薬と、がん細胞の活性化を抑える阻害薬の併用が有効であることを突き止めた。

 年間死者数が7万人超と、がんの中で最も多い肺がんの根治に結び付くと期待される。金大角間キャンパスで会見した矢野教授は「今後、副作用が少なく効きやすい阻害薬を開発し、分子標的薬と併用する臨床研究を進めたい」と述べた。研究成果は同日、英国科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載された。

 研究グループは、肺がんの4分の1を占める「EGFR遺伝子」に変異が生じたケースを分析。最新の分子標的薬「オシメルチニブ(商品名タグリッソ)」を使うと、腫瘍は縮小するものの、一部はAXL(アクセル)と呼ばれるタンパク質を活性化して生き延びることが分かった。

 この分子標的薬とAXL阻害薬を併用すると、がん細胞はほぼ死滅した。マウスを使った実験などでは、がんの再発を著しく遅らせることも分かった。

 分子標的薬は70〜80%の確率で腫瘍を縮小させるものの、一部が生き残り、残存した細胞が薬への耐性を獲得して再発するのが課題となっている。これまで、耐性を持つがん細胞に効く新たな分子標的薬が開発されてきたが、それにも耐性が生じ、いたちごっこが続いている。