日本音楽著作権協会(JASRAC)は2020年にもブロックチェーン(分散型台帳)を本格導入する。浅石道夫理事長が2019年2月4日に表明した。楽曲の利用・徴収・分配履歴を改ざんが困難な形で記録し、音楽著作権使用料の流れの透明性を高める。

JASRACは18年10〜11月に日本IBMと共同で実証実験を実施し、楽曲の利用・徴収・分配データをブロックチェーンで管理できることを確認した。19年夏にはより実際の業務に近い形で2回目の実証実験を計画しており、20年にも一部業務で本格導入したい意向だ。

JASRACの年間の徴収・分配額は約1100億円に上る。1件の楽曲利用で生じる著作権使用料は1円に満たないケースも多く「トランザクションの量でいえば小さめの地銀に相当する規模」(JASRACの伊沢一雅常任理事)という。

現在は楽曲の利用・徴収・分配履歴をJASRACの保有するデータベースに蓄積しており「権利者からは著作権使用料の流れが詳細に分かると好評を得ている」(伊沢常任理事)。浅石理事長はブロックチェーンを活用するシステムに切り替えることで「システムの運営費が減ることは期待していない。それよりもJASRACの著作権使用料の流れについて、さらに透明性を確保できるのが大事」とする。

一方で、浅石理事長は「ブロックチェーンさえ導入すればJASRACのような管理事業者が不要になるとの考えは誤解である」として、JASRACが引き続き管理業務を展開する必要性を強調した。

(日経 xTECH/日経コンピュータ 金子寛人)

[日経 xTECH 2019年2月4日掲載]
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO4090001005022019000000?s=0