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 1万年以上前に訪れた最後の氷河期では、北米と南米とを結ぶ”橋”にオオカミのような肉食獣や地球史上最大のクマがうろついていた。
橋――すなわち中米にあるメキシコの水中洞窟の底には、太古の時代の墓場がある。
ここから、大きく顔の短いクマ(Arctotherium wingei)の頭蓋骨、オオカミのようなイヌ(Protocyon troglodytes)の骨、さらにはナマケモノ、バク、
サーベルタイガー、クーガー、ゾウに似た動物ゴンフォセレなど、さまざまな骨が発掘されており、中には1万2000年前の人骨すら見つかったという。

■巨大水中洞窟の闇に潜む狡猾なトラップ
 骨が発見されたのは、ユカタン半島東海岸に伸びる世界最大級の水中洞窟、サク・アクトゥン洞窟のオジョ・ネグロ穴だ。
オジョ・ネグロとはスペイン語でブラックホールのことで、後期更新世の名残りを今に伝える天然のタイムカプセルのようなところだ。
ここは数千年前、狡猾なトラップのような場所だった。なにしろ落ちれば60メートルはあり、何も知らない動物がたくさんの命を散らせてきたのである。
やがて氷河が解けて、無数の死体が折り重なる穴を水で満たす。こうして彼らは永遠に水の中に保存されることになった。

■南米でしか発見されていなかった動物の骨
 熱帯の中央アメリカで大昔の骨が発見されることは滅多にない。
だが過去12年間で収集されてきた骨の中に大型のクマやオオカミのものがあったことが衝撃だったのは、それだけが理由ではない。
これまで、この2種は2000キロ以上も離れた南米でしか発見されたことがなかった。
それなのに、南米ではない地域で、これまでで最高の状態のサンプルが発見されたのである。

 歴史的に見れば、動物たちは北米と南米の両大陸の間をいくども移動してきた。
もしかしたら今回のクマとオオカミは、そうした移動の最中、ふと立ち止まってみる気になったのかもしれない。
そして、そのまま中米の青く生い茂った地域に居ついてしまった。
別の可能性としては、3万5000年から1万2000年前の最後の氷河期の間か後に、一度南に移住した彼らが、再び北へと移動を始めたのだとも考えられる。

■氷河がうながした動物の移動
 現場から多様なナマケモノが発見されていることからも、中米の生物の歴史は想像以上に複雑であることが窺える。
研究者は、後期更新世の末期において氷河が引き起こした風景や生態系の変化が、クマやオオカミ、あるいホモ・サピエンスが移住をしたことの
裏付けであると考えている。

 なお、この洞窟でなされた最大の発見は、2007年に発掘された2つの人骨である。
その1つは、およそ1万3000年前に生きていた10代の少女のものだ。
この地域の人たちは、かつて巨大な陸上性ナマケモノや見上げるほどに背の高いクマと一緒に生活をしていたのだ。

この研究は『Biology Letters』に掲載された。

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