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ゲーム障害、実態把握急ぐ 診断基準確定で厚労省
2019年5月25日 21:17

生活に支障が出るほどオンラインゲームなどに没頭する「ゲーム障害」を新たな依存症とする国際疾病分類(ICD)が25日、世界保健機関(WHO)の年次総会で採択された。診断の基準がはっきりし、症例の研究が進みやすくなる。厚生労働省は今後、国内の実態調査を進め、対策を検討する。

各国で医師の診断や調査に使われるICDの改定は約30年ぶり。WHO加盟国は今後、国内の統計などを新たな分類に基づくものに切り替える。

新たなICDは「ゲームの時間や頻度をコントロールできない」「日常生活の中で他の活動を差し置いてゲームを最優先する」「生活に支障が出ているのにゲームを続ける」という3つの基準を提示。当てはまる状態が12カ月以上続いた場合、依存症の疑いがある。

厚労省の推計によると、病的なインターネット依存の疑いがある中高生は2017年度に全国で93万人いるとされ、5年前の前回調査からほぼ倍増した。利用しているのはオンラインゲームや動画サイトなどが多い。ただ、ゲーム障害にはネットに接続していないテレビゲームへの依存も含まれ、実態は十分に分かっていない。

ICDの採択を前に根本匠厚労相は24日、「研究を進めた上で、どういう対応が必要か考えていきたい」と表明した。厚労省は18年6月、WHOがICD改定を発表したことを受けて、10〜20代の9千人にゲームの利用時間などを尋ねるアンケート調査を開始。実態の把握を急いでいる。

今後大きな課題となるのが対応できる医療機関の少なさだ。カウンセリングや運動を織り交ぜながら徐々にゲームをする時間を減らしていく治療が有効とされているが、対応できるのは16年時点で二十数カ所という。

厚労省は各都道府県や政令市で、アルコールと薬物、ギャンブルの依存症について治療と情報発信、人材育成を担う拠点病院の選定を進めている。今後、ゲーム障害についても同様の対応が必要かどうか検討する。

もっとも、生活に困っているわけでもないのに万引きを繰り返す「病的窃盗」は以前からICDに盛り込まれていたが、いまだ拠点病院の対象にはなっていない。ゲーム障害の対策にも時間を要する可能性がある。