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企業を「反日認定」して嫌がらせをする人たちがいる。ネット上にある根拠のない説を信じ、ネガティブなイメージを広めるのだ。そのターゲットの一つになっているのが、小売店の「ドン・キホーテ」だ。文筆家の古谷経衡氏は「創業者の名前と、ドン・キホーテが持つ“身体的イメージ”が理由だ」と指摘する――。

■「朝鮮半島にルーツ」があるだけでレッテル張り

 ネット右翼には、全くつける薬がない。ネット右翼は体系的な知識を持たず、本を読まず、一次資料にあたることは一切なく、自分より上級の自称「保守系言論人」に寄生し、その珍説・トンデモ陰謀論を垂れ流し続けている。その「垂れ流し」は、まるで上流にある公害企業が、下流にある清廉な漁場を重金属で汚染するかの如く、ネット上に播種し、取り返しのつかないネガティブなイメージを特定の企業に与えることになる。

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 この国のネット右翼は、日本国家に帰順を誓い帰化しようがしまいが、「元在日コリアン」「朝鮮半島にルーツを持つ代表者」という事実のひとつがあれば、それを際限なく拡張して反日企業・在日企業のレッテル張りをする。それに踊らされ、珍妙な都市伝説を披露したのが、当時ネット右翼番組の領袖のひとりである水島総氏であったことは前回連載で指摘した。

■「安田姓=反日企業」という脳が爆発しそうな屁理屈

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 例えば「安」という氏名の在日コリアンが、通名使用や帰化の際に「安田」や「安本」を名乗る、改姓する、ということは決して珍しくはない。だが、「安田」姓自体は伝統的に日本の氏族(桓武平氏の系統など)であることは自明であり、そもそも「安」という一文字の姓も日本固有の氏族として存在する。

 にもかかわらず、ネット右翼はこれを以て、在日コリアン、若しくは帰化人には「安田」姓が多いと勝手に断定している。

 事実、昨年(2018年)10月、シリアで武装勢力に拘束され、3年4か月ぶりに解放されたフリージャーナリスト・安田純平さんをめぐって、ネット右翼は彼が「安田姓」であることだけを根拠に、「在日」もしくは「帰化人」である、と妄想をたくましくして「自己責任論」をぶちあげた。安田さんが日本人ではないのなら、日本の税金を使って救助するのは筋が通らないというものだが、安田さんは歴とした日本人であった。実に馬鹿馬鹿しいと言わなければならないが、所謂ネット右翼による「在日認定」とは、この程度の根拠で行われているものなのである。

 だからドンキの創業者である安田隆夫氏も、在日コリアンか、ないしは元在日コリアンに違いないのだから、その企業全体が反日企業であり、在日企業である、という脳が爆発しそうな屁理屈を考案したのである。試しに、グーグルで「ドンキ 安田」と検索すると、真っ先に「在日」と検索候補が出るのは、こういったネット右翼の根拠なき名前のみに依拠した「在日認定」の消し難い負の遺産なのだ(グーグルも、こういった悪質なデマ検索の痕跡は、削除する努力を行ってほしいものである)。

■安田隆夫氏の生まれは「岐阜県大垣市」

 安田隆夫氏が在日コリアンや帰化人であるという、これら珍妙な都市伝説は、氏の自伝である『安売り王一代 私のドン・キホーテ人生』(文藝春秋)からして、一目瞭然で間違いだとわかる。

 安田隆夫氏は前掲書によると、「1949年、岐阜県大垣市」の生まれで、「父親は工業高校の技術科の専科教師。厳格な教育者のイメージそのままの堅物で、酒もたばこも一切やらない。長男である私にはとりわけ厳しく、テレビも“NHK以外は見るな”と言われて育った。いま思えば、父親は戦争を経験し、家庭を守るために必死だったのかもしれない」(P.18)

 とある。ネット右翼は何かにつけてNHKを「反日偏向報道局」と敵視し、昨今「NHKから国民を守る党」というカルト的地域政党も誕生するくらいだが、当の安田氏の実父が、バリバリのNHK信仰者であり、所謂「戦後民主主義」の申し子のような人物であったといえる。そうした環境の中で安田氏は育った。

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 だが、彼らは資料や本を一切読まない。ただひたすらネット上に繁茂する言説をコピペすることによって、特定の企業やその創業者を「在日コリアン」「元帰化人」と決めつけているのだから救いようがない。(続きはソース)

著者:古谷経衡(文筆家)

5/27(月) 9:15配信
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190527-00028715-president-bus_all