の指針「骨太の方針」は、国民負担増を伴う改革の多くを参院選後に先送りし、迫力を欠く内容となった。

 選挙直前に有権者の批判を避けたい与党と、10月の消費税増税を控えて世論を刺激したくない財務省などの思惑が一致したためだ。小さな政府を掲げた小泉政権が、抵抗勢力と戦う「改革の旗印」として活用したかつての姿は見る影もない。

 骨太方針は秋以降に本格化する来年度予算編成の前哨戦の意味合いを持つが、今年は与党の要求に押し切られた部分が目立つ。

 焦点となった最低賃金の引き上げは、デフレ脱却に向けて所得と消費を増やすのが狙いだが、経営体力の乏しい中小・零細企業の反対は根強い。骨太方針では、自営業者らを支持層とする一部与党議員の批判を踏まえ、具体的な数値目標の設定を見送った。さらに生産性向上の名目で「(中小企業に)思い切った支援策を講ずる」と明記し、予算・税制上の優遇措置もちらつかせた。

 また喫緊の課題である社会保障費の抑制では、高齢者の就労促進や予防医療など反発の少ない項目に紙幅を割いた。一方で後期高齢者医療制度や年金・介護の見直しといった重要課題には踏み込まず、社会保障の給付と負担の見直しについては「2020年度の骨太方針で政策をまとめる」と記すにとどめ、先送りした。

 公共投資の項目には、自民党との最終調整を経て「東京五輪・パラリンピック後の経済成長を確かにする」との文言が滑り込んだ。来年夏の五輪後の景気下支えをにらんだ公共事業の積み増しに「お墨付き」を与えた形だ。財務省幹部は「背景に予算獲得を求める与党の意図があるのは間違いない」と警戒感をにじませる。

 小泉政権時の骨太方針は付属文書を除く本文が40ページ以内に収まっていたが、今年は各省や与党の要望を受け入れた結果、75ページと過去最大になった。自民党の一部議員ですら「大なたを振るって重要項目に絞るべきだ」と不満を漏らすほどだ。有識者からは「安倍政権は財政再建に本気で取り組む気がない」(日本総合研究所の湯元健治副理事長)とあきらめの声が聞かれる。 

6/22(土) 7:45配信
時事通信
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