神戸市は早朝に収穫した市内特産のイチジクを、その日の夕方に香港の食卓に届ける取り組みを29日から開始する。香港で流通しているイチジクは果肉が硬い中東産が大半といい、柔らかくて甘いもぎたての神戸産を現地の富裕層に浸透させ、「神戸ブランド」を築く狙いがある。(上杉順子)

 兵庫県は愛知、和歌山に次ぐイチジクの産地で、中でも神戸市は栽培面積、生産量とも県内トップ。西区の農家68戸が栽培に取り組み、旬の8〜10月に約500トンを出荷、大半は市内で流通する。生産地と消費地の近さを生かし、完熟を待って収穫するのがこだわりで、さわやかな甘みやソフトな食感が特長という。

 しかし、店頭には「兵庫県産イチジク」として並ぶため、消費者に神戸特産と認識されていない。食を軸とした「食都神戸」事業を推進する同市は昨年、「戦略品目」の第1号に指定し、市内外の飲食店が神戸産イチジクを使ったメニューを出すフェアを企画するなど、認知度アップに努めている。フェアは今年、参加予定店が昨年の倍以上の約90店になるなど好調という。

 輸出プロジェクトは、近距離で日本国内と変わらぬスピードで食卓に届けられること、ターゲットの富裕層が多いことなどから香港が選ばれた。国内では1500円程度の箱入り9個が、約6千円で販売されると想定している。

 西区の畑で午前3時に収穫を始め、同5時に集荷を完了。車で2時間の関西空港に運ぶ。同10時発の香港便に載せ、空路3時間。昼すぎに香港に到着し、高級食材の販売業者を通じて、午後5時ごろには事前注文した消費者に届ける。

 香港では現在、「逃亡犯条例」改正案に端を発したデモが激しさを増しているが、神戸市によると現地の経済活動に大きな影響は見られないという。

 担当者は「日本の果物は人気だが、イチジクはあまり出回っておらず、ブームをつくれるかもしれない。事前注文の固定客なので、消費者の生の声も聞けそうだ」と期待。同市西区神出町の栽培農家西馬良一さん(66)は「ケーキを思わせるほどの甘さと舌触りを楽しんでほしい」としている。

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