最新がん治療「陽子線」導入も利用伸び悩み 京都府立医大病院

 京都府立医科大付属病院(京都市上京区)が最新のがん治療の「陽子線治療」を4月に開始してから4カ月を迎える。6月末までに治療したのは31人で、初年度260人の目標に届かないペースとなっている。治療費は高額だが、安定して運用するには一定の患者数の利用が必要で、府は全国の中でも手厚い助成制度の活用を呼び掛けている。

 陽子線治療は放射線の一種の陽子線を照射し、体内の深部にあるがんの病巣だけを狙う。周辺の正常組織への影響を抑え、体への負担が少ないメリットがある。装置の中で1日1回2分程度の照射を13〜39回繰り返す方法で、同病院では永守記念最先端がん治療研究センターで、府内で唯一実施している。

 同病院で治療した31人のうち26人が保険診療だった。対象は前立腺がん、小児がん、頭頸(けい)部がん、骨軟部がんの4種類で、保険診療の場合、自己負担額が一定額を超えると所得に応じ返金される高額療養費制度が適用される。例えば180万円かかる前立腺がん治療の場合、年収370〜770万円だと実質的な自己負担は約9万5千円で、住民税非課税世帯の70歳未満なら約3万5千円となる。

 一方、保険適用外の肝臓がんや肺がんなどを治療する場合、約300万円の自己負担が必要となるため、府は本年度、1人当たり25万円を上限とする助成制度を創設。18歳以下の子どもがいる世帯は上限50万円として全国で最も手厚くした。年間45人程度の利用を想定し1500万円の予算を確保したが、申請は2件にとどまっている。

 治療費が高額になるのは装置の維持管理に年間8〜9億円かかるためだ。安定して運用するには、年間300人以上の治療が必要という。陽子線治療を担当する相部則博助教は「府民にとって、がん治療の新たな選択肢が増えた。標準的な治療を受けた後、主治医と相談し、メリットがあれば来てほしい。全疾患に対応できるよう治療の精度を高めていきたい」としている。


京都府内で唯一の陽子線治療装置。小児がんの子どものため、京都造形芸術大の学生がイラストを描いた(京都市上京区・府立医大付属病院)
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2019年08月26日 21時40分