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冬にかけ増加 心筋梗塞 入浴時など「寒暖差」注意
2019年10月22日

 秋の深まりとともに、朝晩の冷え込みが激しくなってきた。これから冬にかけて要注意なのが、心臓の血管が詰まることで引き起こされる心筋梗塞だ。気温差が激しいと自律神経のバランスが崩れて血圧が上下に変動、血管にストレスがかかりやすいという。予防には、規則正しい食生活や適度な運動が欠かせない。 (細川暁子)

 「心筋梗塞の患者は冬に多い」。名古屋ハートセンター(名古屋市東区)循環器内科統括部長の伊藤立也医師は指摘する。厚生労働省の二〇一七年の人口動態統計によると、急性心筋梗塞の死亡者三万四千九百五十人のうち、最も多いのは一月の四千四百五十七人。二月以降は減少傾向だが、気温が下がる十月から十二月にかけて増加する。

 「寒暖差が激しいと血圧が変動しやすい」と伊藤医師は分析する。特に注意したいのは、入浴時の「ヒートショック」だ。冬場、脱衣所に暖房がついていない場合、そこで裸になると血管は収縮し、血圧が上がる。血流を減らすことで熱が体の外へ逃げるのを防ぐためだ。一方、熱い湯船に入ると、今度は熱を放出しようと血管が広がって血圧が低下。そこから脱衣所に戻ると、再び血圧が上がる。

 心筋梗塞は、血の塊「血栓」によって、心臓の表面を走る血管「冠動脈」が詰まることで発生。血栓は、血管内にコレステロールなどの脂質がたまってできたプラークが、急激な血圧の変化などで破裂してつくられる。大きな温度差は血栓ができやすい状態を生み出すのだ。冠動脈が詰まって、心臓の筋肉「心筋」に血液が流れない時間が長いほど、全身に酸素が行き渡らなくなる。

 心筋梗塞の症状は主に胸の痛み、冷や汗など。嘔吐(おうと)や呼吸困難を伴うことも。発症後は、血管を広げて血流を再開させる「カテーテル手術」が必要だ。半日以内に処置しないと心筋が完全に壊死(えし)してしまう。

「再開までの時間が長いほど、まひなどの後遺症や死亡の危険が高まる」と伊藤医師。「経験したことのない胸痛など心筋梗塞が疑われたら、ためらわずに救急車を呼んで」と話す。本人が意識を失っていたり、脈がなかったりした場合は、周囲の人がまずは心臓マッサージ、さらには自動体外式除細動器(AED)を使って電気ショックを与えることも求められる。