AGA(男性型脱毛症)のいい新薬ができたとか、髪を増やすための本がヒットしているなど髪に関する情報が飛び交っている。しかし、AGAの薬が効果を発揮しない人も、何をやっても育毛・増毛しない人もたくさんいる。そもそも、それらの情報にどれだけの信憑性があるのか疑わしくて手が出せない、あるいはさんざん試してきたけれど期待を裏切られるばかりだった……そんな気持ちを、私は痛いほど理解できる。

カリスマ美容師の隠れた苦悩

私の生業は美容師だ。華やかなサロン(美容室)に勤め、ミュージシャンや女優、俳優たちのヘアメイクとして働いている。けれども、私には誰にも言えない秘密があった。それは、自分自身の「薄毛に対するコンプレックス」だ。そのコンプレックスは日に日に増し、華やかな現場に行けば行くほど、私を苦しめた。私は、いつの日か帽子が手放せない美容師となった。

あるとき、私が勤務していたサロンに長年薄毛に悩んでいるというお客様が見えた。当時、私は薄毛コンプレックスをブログでこっそり吐露していたため、そのブログを見て「同じ悩みを持っている美容師さんだったら」と意を決して予約をしてくれたのだ。彼の話をじっくりと聴きながら、薄くなった部分をカバーするカットを行い、自宅でもできるヘアセットの方法を伝えた。

後日、そのお客様からメールを頂戴した。そこには、これまで薄毛に悩み人前に出ることもままならず、心を病んでしまったこと、しかし私が勤務していたサロンに勇気を出して来て以来、心が軽くなり人前に出ることも臆することがなくなったことなどがつづられていた。

私にしかできないことがある、と決意し「薄毛専門サロン」を立ち上げた。どんな薄毛の方にも満足いただけるカットとセット方法について試行錯誤を繰り返した結果を拙著『最速でバレずに気になる薄毛をカバーする』にまとめた。

髪の毛はその人の印象を大きく左右する。これは紛れもない事実だろう。だから、薄毛の人は初対面で「この人は薄毛」という印象を持たれてしまう。そうならないために、まずは、自分の特徴から「薄毛」を除外させる印象づくりをすること。

具体的に言うと、顔回りに「薄毛」以外の情報を増やしていくのだ。特徴のあるメガネをかけるのでもいい、日頃ネクタイをする仕事であれば、地味で無難なネクタイをせず少し派手かな、と躊躇するくらいのネクタイを選ぶ。許されるのであれば、蝶ネクタイをマイスタイルとしてしまうのもいいだろう。

そうすることで、「あの緑のメガネの人」とか「いつも蝶ネクタイのあの課長」と、思い出されるときの特徴が「薄毛」以外のこととなる。目標としては、薄毛という特徴を印象の4番目以降に位置づけることだ。

頭部全体の色調を整える

また、薄毛の人は部分的(おでこや頭頂部など)に薄くなっていることが多い。こういった、どこかしら一部分が薄い人がやりがちなのが、髪が薄くない部分はしっかり残すヘアスタイルだ。

これはNGだ。なぜなら、髪が薄い部分とそうでない部分のコントラストがはっきりしてしまうため、余計に薄いところが際立ち、印象づけることになる。こういった方にお勧めしているのは、「自分が許容できる範囲で、髪がしっかり残っている部分もすきバサミですいて地肌感を出す」こと。こうすることで、頭部全体の色調が整い、部分的に「薄い!」という印象をぐっと弱くすることができる。

「それが薄毛対策なのか? 根本的な対策になっていないじゃないか」とお叱りの声が聞こえてきそうではあるが、試してみていただきたい。初対面の相手に対して間違いなく効果がある。

現在、私のサロンでは、さまざまな薄毛タイプの方に向けた対処法やティップスなど、すぐに役立てていただける情報を発信している。最もアクセスが多いのがいわゆる「M字」と呼ばれる、おでこの左右(そり込みの部分)がどんどん後退していくタイプの方に向けた記事だ。

ここではこの「M字」タイプの方に向けた、自分でできるカットとスタイリングの極意を伝授したい。

»次ページ カットオーダーの極意

続きはソースで

https://toyokeizai.net/articles/amp/305880?display=b&;amp_event=read-body