東京
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首都圏の新築マンションの売行きが悪化している。首都圏の新築マンション契約率は、2019年10月には50%割れを記録している。ここまで売れなければ、「販売を好転させるために値段を下げるしかない」と期待している人が多いかもしれないが、実際のところ、値下がりがあっても2021年以降との見方も出ている。(山下和之)
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契約率は下がっても、物件価格の値下げはされない現状

首都圏新築マンションの契約率は50%割れ 新築マンション市場の好不調のボーダーラインは、月間契約率70%といわれる。月間契約率というのは、発売された月中に売れた物件の割合を示すもので、2000戸発売されてその月中に1500戸売れれば、1500戸÷2000戸は0.75だから、契約率75%ということになる。

 新築マンションは着工から一定期間後に販売が始まる、いわゆる“青田売り”が主流。そのため、販売月に70%程度売れれば、竣工までに完売できる目安が立つため、70%が好不調のボーダーラインとされているのだ。

 その契約率だが、民間調査機関の不動産経済研究所によると、図表1にあるように、首都圏では低迷が続いている。直近では2019年9月の56.8%に続いて、10月には42.6%と50%割れを記録した。これは、1990年代のバブル崩壊時の最悪期に並ぶ水準だ。

19年度上半期の平均価格は、前年同期比で4.2%上昇 新築マンションの契約率は下がっていても、物件の価格が下がる気配はない。それどころか、むしろ上がり続けている。やはり不動産経済研究所によると、2019年度上半期(2019年4月〜9月)の平均価格は6006万円で、前年同期比で4.2%の上昇であり、図表2にあるように、月別の動きをみても、8月、9月は前年同月比で二桁台のアップで、10月も1.0%の上昇だった。

 これほど売れなくなっている現状を打開するためには、価格を下げるしかないように思われるのだが、分譲会社などに取材すると、「下げる必要はない」「むしろ上げたいくらい」といった声が返ってくる。

 なぜそうなるのか、その理由として次の4つの理由が挙げられるとするところが多い。


【理由1】新築マンションの「原価」が上がり続けている

 価格を下げられない理由の第一として、分譲マンションの原価である土地仕入価格、建築費がともに上がり続けている点が挙げられる。

 最近仕入れた土地は、2、3年前に比べると2割も3割も高くなっている。2019年の『公示地価』をみても、住宅地は年率1.3%、商業地は4.7%の上昇で、マンション適地の地価はもっと上がっている。

 建築費も国土交通省の建築工事費デフレーターによると、鉄筋コンクリート造の建築費の指数は2017年度の107.4が、2018年度には111.2に3.5%も上がっている。

 働き方改革のため、分譲会社の人件費などの負担も重くなっていて、とても価格を下げられる環境ではない。むしろ、上げたいというのが本音だ。
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【理由2】買った人の世帯年収は、10年間で30.2%も増えている

 価格を下げない・下げられない第二の理由として、価格が高くなっても消費者の購買力は落ちていない、という点を挙げる不動産会社が多い。買手の年収が高まり、住宅ローン金利が下がっているため、購入可能額がアップしているという。

 年収に関しては、リクルート住まいカンパニー『2018年首都圏新築マンション契約者動向調査』から、首都圏で新築マンションを買った人の世帯年収をみると、2008年には737万円だったものが、2018年には960万円に、10年間で30.2%も収入が増えている。

 平均的な会社員の年収がそんな増えているはずはないのだが、実は、この間に共働き割合が39.9%から57.3%に急増した結果、世帯年収が大幅に上がっているのだ。
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【理由3】住宅ローン金利の低下も追い風になっている

 加えて、住宅ローン金利の低下の影響も大きい。年収に占める年間返済額の割合を示す返済負担率を、比較的ゆとりある範囲として25%とした場合、いくらまで借りられるかとみると、2008年の世帯年収737万円で、フラット35の当時の金利2.89%だと借入可能額は4050万円。取得価格は3961万円だから、ギリギリ手が届く範囲だ。



12/22(日) 9:12配信
ダイヤモンド不動産研究所  全文はソース元で
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191222-01110227-diamondf-bus_all&;p=1